プロフィール

井垣太介 (Taisuke Igaki)

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

ブログ全記事表示

最近の記事

カテゴリー

FC2カウンター

最近のコメント

月別アーカイブ

ブログ内検索

リンク

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ドイツでの買収交渉

3月(2011年)には、ドイツでの現地交渉に行ってきました。日本企業によるドイツ企業の買収です。半年ほど掛けて交渉してきたのですが、段々とスケジュールがきつくなってきたため、最後はface to faceの交渉を行い一気に片付けたい!というクライアントからの要請があったため、同行させていただいた次第です。

東日本大震災の翌々日に成田から飛んだのですが、皆家族を日本に置いての海外出張ですから、仕事に集中せよという方が無理があります。しかし動いている案件を止めることもできません。全員が、交渉は2日間に限定し、必ずその2日間で合意に至るという不退転の決意で乗り込みました。

宿泊したのはマンハイムという小さな街で、フランクフルト空港から車で1時間ちょっとかかるのですが、何とものんびりした雰囲気です。今回は現地の法律事務所に応援を依頼していましたので、到着した後すぐにホテルに全員集合し、戦略会議です。私も含めて時差ボケに強い人はいいのですが、結構な強行スケジュールとなりました。

当日は、相手方の弁護士が提供してくれた法律事務所の一室で、朝から交渉が始まりました。場所はハイデルベルクという綺麗な街で(但し、街を歩く時間がなかったので、法律事務所周辺が綺麗だと感じるに留まりました)まずは皆でコーヒーを飲んで、日本の地震の話がしばらく続いた後に、契約書の話に入っていきました。交渉中もこちらは皆、日本の家族とニュースが気になります。しかし、電波が悪くブラックベリーも使えない中、嫌でも交渉に集中せざるを得ない状況でした。

タフネゴシエーターが結集していますので、お互い一筋縄では行きません。相手の利益にも配慮しつつ、ビジネスアライアンスを成功させるのだという本来の目的を忘れずに、条項の一つ一つについて丁寧に誠実に、ときに駆け引きを使いながら交渉していきます。ドイツ語と英語が飛び交う交渉は皆の頭脳的体力を徐々に奪って行きます。まだ明日があるから……ということで、初日は午後9時頃に交渉を中断し、散会となりました。

翌日も午前9時に集合です。初日はこちら側のアドバイザーとしてドイツの法律事務所のパートナー弁護士がいらっしゃったのですが、2日目は都合がつかず、私がメインネゴシエーターとなります。たまにドイツ法に関連する部分が出てきますので、そこは同席してくれた別のドイツの弁護士に確認しながらの交渉になりました。英語で交渉すること10数時間、夜中の11時過ぎにようやく契約書がまとまりました。内容が固まったことを確認するために最終ドラフトに双方がサインをして終了です(実際の調印には公証人の立会いが必要となるため、後日に回されました)。

交渉終了後に、相手方の弁護士が、-いつも事務所に置いてあるのでしょうか- シャンパンを持ってきてくれました。相手方も当方も一緒になって交渉成立を祝って乾杯し、しばらく談笑が続きましたが、こちらはやはり日本の地震の状態が気になりますので、達成感はあるものの、笑顔にはなりきれませんでした。

今回は2日間で計26時間に及ぶ交渉になりましたが、M&Aにおける本当の勝負はこれからです。ドイツでの事業展開が順調に進むことを心から願っています。
スポンサーサイト

米国での調停(その3)

Mediation statementは出すタイミングも重要です。どちらかが先に出してしまうと、もう一方はそれを見て反論を追加できることになって不公平だからです。そこで、相手方の弁護士と電話で話して、合意した特定の日時に同時にmediatorと相手方当事者にメールで送信する約束をしました。その時間の10分前に相手方弁護士に「今から10分後にメールで送ります」と連絡し、時計を睨みながら丁度の時間に同時に送りました。Mediatorからは「受け取った」というメールが届き、相手方からも相手方のmediation statementが届き、一安心です。時差があるので、こういった手続も事前によく協議して決めておかなければなりません。

その後飛行機に飛び乗り、飛行機の中で相手方のmediation statementを入念に読み込んで、口頭で反論できるように詳細なメモを用意しました。時差があるため3日の夜にニューヨークに着き、早速その晩、mediatorと、まだ西海岸にいる相手方の弁護士と、3者で電話会議です。Meditorは既に両者のmediation statementを読んでいるわけですが、お互いの主張を簡単に口頭で伝えた上で、和解の方向性・可能性についてヒアリングを受けました。その後、Mediation当日の集合時間や、2日間の進め方の確認をして終了です。

Mediation当日は、mediatorのローファームに集合です。アメリカらしく、コーヒーやスナック類が豪華に飾られている待機室で、久しぶりの米国ローファームの雰囲気を味わった後、にこやかに(内心は好戦的に)相手方弁護士と握手をしてmediationが始まりました。アメリカのmediationでは、最初にopening statementというプロセスがあります。これは口頭で当事者の主張を述べる手続です。そこで相手方弁護士は、おもむろに畳くらいの大きさがあるボードを5枚ほど取り出しました。このボードは米国の陪審員向けプレゼンテーションでよく用いられるもので、大きな字で契約書の条項が貼り付けられています。相手方の若手弁護士が、法廷映画の俳優のように、流暢に、今回の契約書の内容と紛争の概要、相手方の主張を説明します。すると、いきなりmediatorから質問が出されます。手馴れているようです。こちらも遠慮せずに意見を言ったため、opening statementがディスカッションになってしまい、最初から熱い口頭弁論のようになってしまいました。

途中経過は省略させていただきますが、その後、論点ごとに交渉を重ね、初日は夜7時くらいに解散となりました。翌日も朝9時からスタートし、残りの論点を解決していきます。おおよそ15時くらいでしょうか。ほとんどの条件について合意ができましたので、その後和解契約書(Settlement and Release Agreement)の作成に取り掛かります。しかし、これが大変でした。和解契約書自体はこちらでその場で案を作って提示したのですが、相手方弁護士はトランザクション系の弁護士で訴訟(紛争解決)担当ではないため、和解条項の検討をするために先方の法律事務所で待機している訴訟部門の弁護士と逐一協議を行っているようです。結局、細部にまで交渉が続き、双方の代表者が和解契約書にサインをしたのが何と夜中の3時でした。結構年配のmediatorの弁護士さん、夜中まで全くスタミナが切れず、むしろどんどん元気になっていかれるのが印象的で、夜中3時過ぎにmediationが終わると、おもむろにヤンキースの野球帽をかぶって、待たせてあった車で颯爽と郊外の(?)自宅に帰って行かれました。

私自身はと言いますと、久々のニューヨークということで飛行機を一日遅らせ、友人の弁護士を順番に尋ねて充実したafter mediationを過ごし、翌々日に帰国しました。おそらくは今回のmediationを行わなければ、今でも紛争は継続していたのではないかと思います。当事者双方が2日間で終わらせると決めて臨んだからこその解決だったと思いますが、海外でのmediationはなかなか面白く、紛争当事者にとってもやってみる価値のある手続のように思いました。

米国での調停(その2)

さて、しばらくするとmediatorのリストがメールで送られてきました。候補者全員について経歴書やタイムチャージの金額が書かれています。確かに、mediation経験豊富な弁護士や製薬関連の業務や研究経験がある弁護士がずらっと並んでいます。

ここでは、こちらに有利な判断をしてくれそうなmediatorを探しますが、フィーも若干気になります。Mediatorへの報酬は弁護士報酬と同様にタイムチャージとなりますが、時間当たり300ドルから700ドルまで様々ですので、できればタイムチャージ単価の低めの弁護士を選びたいと思うからです。但し、タイムチャージ単価が安いということは、経験が浅かったり、若かったり、それなりの事情があるものと思われます。こちらは日本の弁護士(今回は米国の弁護士を起用しませんでした)で、先方は世界的に有名な大手ローファームがついていますので、先方の不合理な主張については「それはおかしいでしょう」とたしなめてくれる年配の弁護士が望ましいという配慮も必要です。

CPRからは、当事者間でmediatorを合意して選べるのであればそれでよいが、選べない場合はselectionプロセスに進めると言われています。結局、こちらの希望する候補者と相手方の希望する候補者が一致しなかったため、selectionプロセスに進みました。selectionプロセスというのは、各当事者が希望する候補者を5名ずつ選んで、それに順位をつけてCPRに提出すれば、CPRがそれを点数化して一番獲得点数の高かった候補者がmediatorに選ばれるという仕組みです。そのselectionプロセスの結果、ニューヨークのローファームで長年弁護士をやっておりmediation経験も豊富な弁護士が選ばれました。料金は高いですが頼りになりそうです。

次は、mediation statementと言われる申立書(主張書面)の作成に取り掛かります。事実関係と当事者の主張を整理してmediatorに分かりやすく書かなければなりません。契約書などの疎明資料も一緒に添付します。Mediationでは、通常書面は最初に出す申立書のみですから、必要なことは全部書かなければなりません。今回の調停は1月5日と6日の2日間と決めてスケジュールを組みましたので、12月28日から1月3日までの殆どの時間を申立書の起案に当てることになりました(正月三が日を3日とも事務所で過ごしたのは初めてでした)。

続きは次回に。

米国での調停(その1)

少し前の話になりますが、今年(2011年)の1月にニューヨークで調停をしてきました。当方は日本企業で、相手方は米国企業です。昨年、半年ほど掛けて交渉を行ってきたのですがどうしても合意に至らず、のんびり時間を掛けていると対象となっている事業・技術が劣化してしまうために契約書に従って調停に持ち込んだ次第です。

調停(Mediation)は仲裁(Arbitration)とは異なり、調停委員(Mediator)の判断には何ら拘束力はありません。その意味で通常の「和解」と同じなのですが、第三者が入って話をまとめる手続であり、2日とか3日といったスケジュールを決めて行うため、和解しやすい(和解できないことも早期に判明する)という効果があります。

さて、今回の契約には、Dispute Resolution条項に以下の規定が入っていました。
"If the dispute has not been resolved by negotiation as provided in Section ** within 30 days after delivery of the initial notice of negotiation, or if the senior executive failed to meet within 30 days after delivery, the Parties shall endeavor to settle the dispute by non-binding mediation under the CPR Mediation Procedure then currently in effect. Unless otherwise agreed, the Parties will select a mediator from the CPR Panels of Distinguished Neutrals."

シニアエグゼクティブによる交渉が30日以内にまとまらなければCPRのルールに従って調停を行いましょう、調停委員はCPRに登録している「利害関係を有しないメンバー」から選びましょうということです。
CPR(International Institute for Conflict Prevention and Resolution)というのは民間の調停機関で、フットワーク軽く調停委員(通常は登録している弁護士)の紹介をしてくれます。

今回はまず相手方との間で、どこでmediationをやるのかが争点になりました。こちらの会社は東京、先方は米国西海岸です。最初はサンノゼを提案され、こちらから「あまりにそちらに近過ぎる。コスト面でも人選面でもこちらに不利益」と反論し、その後、サンフランシスコになりかけましたが、結局、なるべくニュートラルにやりたいということでニューヨークに決めました。

続いて、CPRにメールをしてmediatorの紹介を依頼します。Mediator候補者リストには2種類あります。一つは"Unvetted list of mediators"と呼ばれるもので、紛争になっている分野(今回は製薬)に強い候補者を紹介してくれるが、利益相反に関する事前チェックは経ていないものです。もう一つが"Vetted list of mediators"といって、利益相反チェックを済ませた候補者のリストになります。いずれのリストも最大15名をピックアップしてくれますが、前者は1,500ドルで後者は1,750ドルということでした(その当時の料金です)。利益相反があれば意味がないため、相手方と協議して” Vetted list of mediators”を希望しました。費用についてはこれも相手方と協議して折半にしました。

続きは次回に。

 ホーム 


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。