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井垣太介 (Taisuke Igaki)

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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グローバル企業における国際税務戦略

外国に複数の子会社を保有している日本の企業がアウトバウンドの買収を行うケースや、外国の子会社をまとめてぶら下げる中間持株会社を設立する場合、ビジネスの問題(サプライチェーン・マネジメントなど)に加えて、必ず国際的なタックス・プランニングが必要となります。

クロージング後/設立後の論点としては、移転価格税制、タックスヘイブン対策税制、PE課税などがあり、一方、持株会社設立の際には、どこの国に設立するか、会社形態をどうするか(具体的には、受取配当に対する課税、親会社への配当の際に発生する源泉税が問題となり、それに関係してタックスヘイブン対策税制や租税条約が問題となります)、買収の場合には、買収資金をどのように調達しどのように直接の買い手に提供するか(具体的には、誰が資金調達して、それを出資/貸付のいずれの方法で買収ビークルに提供するかという問題)が問題となります。

日本では、平成21年税制改正によって、受取配当金が非課税(益金不算入)になりましたので、一見、日本の親会社にどんどん資金を吸い上げれば良いかのように見えますが、孫会社から親会社まで配当が流れてきた場合には配当の5%部分について日本で課税されることになっているため、これまで例えばEUにある中間持株会社で資金を溜めてEU内で循環させて利用していた場合には5%部分の二重課税を甘受する理由が本当にあるのかを検討する必要があります。また、上記税制改正を受けてタックスヘイブン対策税制も平成22年に改正され、持株会社が子会社から受領した配当が原則合算課税の対象外となりましたが、他方で、持株会社が支払った法人税に関する間接外国税額控除と、持株会社が日本の親会社に配当する際に発生する源泉税に関する直接外国税額控除が認められなくなったことから、タックスヘイブン国に持株会社を置くことが本当に有利かどうかを検討する必要があります (*1)。

続いて、買収のケースでは、親会社が借入れを行った資金を、買収ビークルに出資するか貸し付けるかという論点が発生し、かつ、買収ビークルは買収対象会社国に作るとしても、その買収ビークルをぶら下げる中継持株会社を別の国に設立すべきかどうかも問題となります。

まず、日本の親会社が借入れを行い、買収ビークルに出資した場合は、親会社レベルで受取配当の益金算入(5%×41%=+2%)と支払利子の損金算入(△41%)が発生し、トータルで△39%となります。すなわち、出資という形で買収ビークルに資金を提供すれば受取配当課税を検討することになるわけですが、これが買収ビークルへの貸付(ローン)となれば、受取利子の益金算入を考慮することになります。例えば、日本の親会社が借入れを行い、海外の買収ビークルに貸し付けた場合は、親会社レベルでは支払利子の損金算入(△41%)/受取利子の益金算入(+41%)がおおむね相殺され、買収ビークルにおける支払利子の損金算入(例えば、米国なら大体△36%、イギリスなら△28%、オランダなら△25.5%)のみが残ることになります。よって、親会社に利益が出ている限り、前述した出資スキームの方が税務上は有利ということになります。

更に、例えば、オランダや香港等の中継国に持株会社を設立し、日本の親会社がその持株会社に出資又は貸付を行い、その持株会社から対象会社国の買収ビークルに出資又は貸付を行うスキームも検討に値します。一般的に、買収ビークルには貸付の形態を採ることにより、支払利子の損金算入を利用でき、中継国の持株会社には出資の形態を採ることで、日本の親会社において受取配当の益金不算入を利用でき、更に中継国が税率の低い国であれば、持株会社において受取利子の益金算入による課税を減らすことができます。なお、対象会社→買収ビークル→中間持株会社→日本の親会社の順番で配当を流していく場合には、すべての配当局面で配当源泉税を検討する必要があり、外国同士または外国と日本との間の最新の租税条約や、それらの条約の改正の動向にまで目を配らなければなりませんし、配当源泉課税の対象外となっている特殊なエンティティ(例えば、オランダにおける協同組合(Coop、Cooperative Association(Cooperatieve Vereniging))を使うかどうかも検討すべきです。

もちろん、実体のないペーパーカンパニーを節税のために利用した場合は、税務当局から租税回避行為であるとして否認されるリスクがあります。また、最終的なエグジットを見越してキャピタルゲイン課税の問題も併せて考慮する必要がありますし、更には、組織再編/買収後の取引ベースでの課税(移転価格の問題)も一緒に検討しなければなりません。あるいは、外国子会社の株式を新たに設立する中間持株会社に譲渡する場合には、日本の親会社レベルで株式譲渡損益課税が発生するに留まらず、国によっては、事業の譲渡と同視され、その国でも譲渡損益課税が発生することがありますから(ちなみに、米国では日米租税条約によってこの場面での米国での課税は発生しないとされています)、関係各国の税法と租税条約は全て調査する必要があります。ここが国際税務戦略の難しいところでありますが、世界の大企業が徹底的に研究されたタックス・プランニングによりグループ全体の負担税率を大幅に引き下げている中で、日本企業はまだまだ良い意味でも悪い意味でも正直に高い税負担を甘受している傾向にありますので、今後、日本企業が海外企業を買収する際あるいは国際的なグループ再編を行う際には、積極的に税務戦略を検討・立案したいと考えています。


(*1) 平成22年改正によって、タックスヘイブン税制におけるトリガー税率は、従前の25%以下から20%以下に変更されました。中国(25.0%)、マレーシア(25.0%)、ベトナム(25.0%)、韓国(22%)といったアジア諸国に進出している子会社数は相当数に上るため、トリガー税率が20%以下となれば、企業の税務負担と申告作業が相当程度軽減されることになります。なお、これらの国は法人税率を下げることに熱心であるため、具体的な税率は個々のトランザクションの際に確認してください。
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