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Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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簡易組織再編の原則と例外

実務上、検討する機会が多い制度の一つとして簡易組織再編が挙げられますが、簡易組織再編は意外と細かくて、例外や手続について完璧に押さえるのが難しい制度ですので、一度まとめておきます。

株式会社が吸収型再編を行う場合、原則として、両当事会社において株主総会の承認決議が必要です。根拠条文は、存続会社が会社法795条、消滅会社が783条です。決議要件は、存続会社も消滅会社も「特別決議」(総議決権の過半数(*1)を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上(*2)の賛成、会社法309条2項)が原則ですが、公開会社が消滅会社となるケースで、消滅会社の株主に譲渡制限株式が対価として交付される場合には「特殊決議」(総株主の半数以上の株主の賛成+総議決権の3分の2以上の賛成、会社法309条3項2号、3号)が要求されます。

さて、上記承認手続を省略できるケースの一つが簡易組織再編です。例えば、吸収分割であれば、吸収分割会社の株主に交付する「吸収分割承継会社の株式の数に1株当たり純資産額を乗じて得た額」と「吸収分割承継会社の株式等以外の財産の帳簿価額等」の合計額が、吸収分割承継会社の純資産額の20%を超えない場合(796条3項)、承継会社における株主総会承認決議が不要となり、吸収分割承継会社に承継される資産の帳簿価額の合計額が、吸収分割株式会社の総資産額の20%を超えない場合(784条3項)、分割会社における株主総会承認決議が不要となります。

この簡易な手続は、吸収合併(存続側)、吸収分割(分割側&承継側)、新設分割(分割側)、株式交換(完全親会社側)、事業譲渡(譲渡側&譲受側)について認められており、新設合併と株式移転については認められていません。また、簡易事業譲渡についてだけ、他とは離れた場所に条文があります(会社法467条1項2号、468条2項)。

実務上、注意しておくべきは、簡易組織再編ができないケースです。以下の場合には、簡易組織再編ができません(*3)。

① 株主に対する株式買取請求に係る通知又は公告の日から2週間以内に、法務省令で定める数の株式を有する株主が当該組織再編行為に反対する旨を当該会社に通知したとき(会社法796条4項) = 具体的には、特別決議で議案が否決される可能性のある数(定款で特に変更を加えていなければ、1/2×1/3+1で、6分の1超、会社法施行規則138条、197条)の反対通知がなされた場合
② 合併差損が発生する場合(会社法795条2項)
③ 対価として譲渡制限株式を交付する場合(会社法796条3項但書)


最後に、簡易組織再編においても、会社法785条2項2号に基づき反対株主の株式買取請求権は発生しますが、簡易吸収分割及び新設簡易分割における分割会社の株主には株式買取請求権が与えられていませんので(会社法785条1項2号、806条1項2号)、注意が必要です。


(*1) 「総議決権の過半数」という定足数については、定款で3分の1にまで下げられる。
(*2) 3分の2を上回る割合を定款で定めることが可能。
(*3) 吸収分割における分割会社に関しては、かかる例外の適用がなく、20%要件さえ充たせば簡易組織再編が可能。
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MBOの際の「公正な価格」とは(その2)

続いて、MBOに関連する代表的な株式取得価格決定申立事件(*1)を整理します。

(1)レックスホールディング事件(東京地裁H19.12.19、東京高裁H20.9.12、最高裁H21.5.29)

【事案の概要】レックスホールディングス(「牛角」等フランチャイズ飲食店を経営)の取締役とアドバンテッジパートナーズとが共同して行ったMBOに際して、公開買付けに応じなかったレックスの株主が、裁判所に株式取得価格の決定を申し立てた。
【大阪高裁・最高裁の判断】市場株価が短期的には様々な影響を受け得ることを理由に、本件公開買付け公表前6ヶ月間の終値の平均値に、同時期のMBO事例のプレミアム平均値20%を加算。

(2)サンスター事件(大阪地裁H20.9.11、大阪高裁H21.9.1)

【事案の概要】サンスターの代表取締役がSSAの100%親会社の代表者であったところ、SSAがサンスター株式の公開買付けを行い、MBOを実施。
【大阪高裁の判断】公開買付け公表後の株価のみならず、MBOの準備を開始したと考えられる時期から、公開買付け公表時までの期間における株価についても特段の事情がない限り排除すべきとし、株価の推移や業績の予想などを根拠に、公開買付け公表日1年前の株価の近似値に、同時期のMBO事例のプレミアム平均値20%を加算。

(3)サイバード事件(東京地裁H21.9.18)

【事案の概要】サイバードホールディングスの代表取締役らが、ロングリーチファンドと共同してMBOを実施。
【東京地裁の判断】公開買付け公表前1ヶ月間の市場株価の終値の出来高加重平均値(5万1133円)を株式の客観的価値と認め、公開買付け価格6万円は、MBOにより増大が期待される価値のうち既存株主に分配されるべき部分の最大限を織り込んだ価格として、公開買付け価格6万円を取得価格と認めた。

上記の事案においては、いずれも、株式を取得する経営陣と対象会社の株主との間に構造的利益相反(*2)が存在するところ、手続として利益相反の回避・軽減措置を採る必要がありますが、その前に、MBOにおける公開買付け価格が不適切(不当に廉価)だとそもそも何が起こるのでしょうか。この点については、

① 公開買付けが成立しないおそれ。
② スクイーズアウト後に反対株主から取得価格決定申立を提起されるおそれ。
③ 裁判所が公開買付け価格から乖離した取得価格を決定した場合、株式買取請求に応じることによる多額のキャッシュアウト。
④ 裁判所決定後、公開買付けに応じた株主が、MBOに伴う株式買取価格が低すぎたとして裁判所決定価格との差額の支払いを求めて提訴してくるおそれ
(*3)

等を指摘できます。

では、かかるリスクが顕在化しないために実務上どのような対応を採るべきか。これについて、次回以降、Q&A方式で説明していきたいと思います。
【執筆:弁護士吉村尚美】


(*1)  類似の事件として、①カネボウ事件(H20.3.14東京地裁決定):旧商法下での営業譲渡に反対する株主による株式買取請求権行使事件(地裁決定では、TOB価格を否定、鑑定書に基づく評価額を追認。現在東京高裁で係争中)、②日興コーディアル事件(H21.3.31東京地裁決定):日興コーディアルとシティグループジャパンホールディングスとの間の株式交換に反対した株主による株式買取請求事件。公開買付け価格を公正な買取価格と認定した。
(*2)  企業価値の向上を通じて株主の利益を代表すべき責務を負う取締役(対象会社サイド)が、同時に買収者でもあることにより、構造的な利益相反が生じる。例えば、買取価格は、買収対象会社の株主にとっては高いほうが望ましいが、買収者である取締役は低いほど望ましい。そこで、経営者が株主に有利な買収か価格を提示しなかったり、買収に応じるかどうかに必要な情報を提供しなかったりする危険がある。株式交換等の組織再編と比較しても、公開買付けは買収者(経営者)と、対象会社の株主との間の直接取引であるから、利益相反の問題が大きい。
(*3)  レックス事件では、2009年8月19日、レックス及び当時の取締役に対して、約2億円の損害賠償を求める訴えが東京地裁に提起された。

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