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井垣太介 (Taisuke Igaki)

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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公開買付け制度に関する法改正(課徴金その他)

平成20年12月12日に改正金商法が施行され,公開買付けに関して,以下のような変更が発生しています。

開示書類
責任の種類
要件
効果
条文
公開買付届出書(訂正届出書を含む)
損害賠償責任
      重要な事項について虚偽の記載があり,
      記載すべき重要な事項若しくは誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けている。
   公開買付けに応じた株主に対する損害賠償責任(無過失責任)。
   取締役について連帯責任あり(相当の注意の抗弁はある)。
27条の20第1項2号(18条1項),27条の20第3項
課徴金
      重要な事項につき虚偽の記載があり,若しくは,
      記載すべき重要な事項の記載が欠けている
公開買付届出書の提出
(公開買付開始公告を行った日の前日の当該株券の最終価格)×(公開買付けにより買付け等を行った株券等の数)×25/100
172条の6第1項
罰則
重要な事項につき虚偽の記載のある公開買付届出書の提出
   違反行為者には,10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金,又は併科
   両罰規定により,法人にも7億円以下の罰金
197条1項3号,207条1項1号


このうち,実務上最もインパクトがあるのが課徴金だと考えます。公開買付届出書において,重要事項につき虚偽記載があれば,例えば1000億円のディールであれば250億円もの課徴金が課されてしまいます。

それから,損害賠償責任が無過失責任となっている点も要注意です。うっかりミスが許されないわけですから,これからは,法務部員も外部弁護士も,公開買付届出書の表面的なレビューだけやっていたのでは,後から言い訳ができない状況に追い込まれてしまいます。これまでは,弁護士としても,「知らない方が安全」(知っていたのに指摘を怠ると,そこで責任が発生するから)という傾向がないわけではなかったと思いますが,これからは,公開買付届出書に記載された事実関係について,しっかりと踏み込んでレビューを行い,例えば,MBOのプロセスなどについて重要な事実の記載があれば(第三者委員会の設置時期やアドバイザーの紹介ルートなど),ヒアリング等によって調査をした上で,真実に沿った記載を行うようアドバイスしていかなければならないと考えます。
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改正独禁法がM&A実務に与える影響(その2)

現行法上,株式取得については,単体総資産額が20 億円を超える会社であって,かつ,当該会社並びに当該会社の国内の子会社(当該会社が議決権の50%超を保有する会社)及び国内の親会社(当該会社の議決権の50%超を保有する会社)の総資産合計額が100 億円を超える会社が,単体総資産額が10 億円を超える会社の議決権を,10%,25%又は50%を超えて取得した場合に報告義務があります。

ところが,最近は,持株会社の解禁等によってグループ経営が盛んになってきていることから,まず,届出義務の範囲について,直接の親会社と子会社だけではなく,「企業結合集団」を基準に判断しようということになりました。

続いて,企業結合審査実務においては,市場シェアの算出のために総資産ではなく売上高を用いていることから,モノサシとして「国内売上高」を届出基準にすることになりました。

その結果,株式取得会社の届出基準については,株式取得会社の属する企業結合集団の最終親会社及びそのすべての子会社の「国内売上高合計額」を用いた基準(金額としては,当事者の一方が200億円超,他方当事者が50億円超)へ変更されました。また,パーセンテージについては,改正後は,20%,50%のいずれかをまたいで増加する場合に事前届出が必要ということになりました(10%から20%に引き上げられたという理解)。

なお,「企業結合集団」の定義が問題となりますが,ここはまだ確定していません。公取委の規則が近々定めてくれる予定ですが,親会社・子会社の該当性判断の際に,議決権のみならず実質的支配関係の要素が入ってくる点がポイントです(改正法10条6項,7項)。形式的基準で判断できなくなる以上,実務上は,ディール検討に入ったら,早々に「企業結合集団」の範囲確定作業も開始しなければならないことになるでしょう。

更に問題となるのは,「国内売上高」の定義です。今までのように,日本国内の子会社及び営業所のPL上の売上高だけを合計していれば良いというわけにはいかなくなる可能性があります。なぜなら,改正法においては,「国内において供給された商品及び役務」に関する売上高を求めることが要求されているからです。詳細は,公取委が定める規則によって確定されますが,商品やサービスの供給場所を基準とされると,企業が普段作成している財務諸表とは別に,国内売上高を算出するための資料を作らなければならなくなります(海外にあるグループ企業から日本に輸入した商品の売上高も入ってくるため)。何とか実務で使いやすい基準になってくれればと願います。

改正独禁法がM&A実務に与える影響(その1)

独禁法の改正については本ブログでも度々取り上げてきましたが,ようやく2009年6月3日に独禁法改正法案が国会で可決成立し,2010年1月1日または4月1日から施行されることになりましたので,改めて,今回の改正がM&A実務に与える影響について整理しておきます。

改正の最大ポイントは,これまで30日以内の事後報告で済んでいた株式取得が,30日前の事前届出制に変更されたことです(欧米では事前届出が原則ですので,日本がそれに合わせた形になりました)。株式取得はM&Aの代表選手であり,とりわけ国境をまたいだM&Aの場合はほとんどが株式取得になりますので,今回の改正のインパクトは大きいと思います。

実務上,注意しなければならないのはスケジューリングです。単にクロージング日よりも前に届け出れば良いというものではなく,30日間の待機期間(株式取得禁止期間)が設定されている(改正法10条8項)ことから,例えばクロージングを10月1日とするならば,届出は遅くとも8月31日までにしておく必要があります。更に悩ましいのは,公取委による排除措置命令が出る可能性がある期間が,「届出受理日から120日を経過した日または報告等の受理日から90日を経過した日のいずれか遅い日」まで延長されうるとされている点です(改正法10条9項)。すなわち,8月31日に届出をした案件については,年末あたりまで排除措置命令がありうるということになってしまいます。よって,例えばM&A後のマーケットシェアが大きい案件については,相当前倒しで公取委への届出をしなければならないということになります。

しかし,他方で,あまり前倒しで報告してしまうと,上場会社の場合,適時開示規制によってプレスリリース日も早まるという問題が発生します(公取委へ事前届出を行うタイミングで会社内部の機関決定が行われるため)。公開買付けによる株式取得を考えている場合には,特にスケジュール管理が難しくなります。

また,改正法の施行日直前にクロージング日が来るような契約にしてしまうと,クロージングが何らかの事情で遅れて施行日をまたいでしまった場合に,遡って公取委への事前届出が必要だったということになってしまいます。実際には,遡って届出することはできませんから,クロージング日を1ヶ月以上遅らせるということになると思われますが,可能であれば,施行日よりも後にクロージング日を設定し,かつ,事前届出も済ませておくという手法が良さそうです。

次回のエントリーでは,届出基準の変更などについて触れたいと思います。

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