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井垣太介 (Taisuke Igaki)

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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M&Aアドバイザーの利益相反問題

私は,とある大学の医学部に設置された臨床試験に関する利益相反委員会の委員をしている関係で,「利益相反」や「倫理」といった問題には元々敏感なのですが,M&Aの世界でも,この「利益相反」「倫理」の問題に直面することがあります。

M&Aというのは,複数の会社が出会って統合に至る取引ですので,引き合わせをする仲介者的立場の人が居るのが通常です。この人が文字通り仲介者であり,その後,買い手・売り手の双方に,専門家アドバイザーがついて対等な交渉が行われるのであれば問題はありません。しかし,仲介者的立場の人が税理士,会計士,弁護士といった専門家であり,こういった専門家が「仲を取り持つ」ような形で契約締結まで持っていった場合はどうでしょうか?

このようなケースは,専門家がそれぞれ守らなければならない倫理規程に違反していることになります。結果が良い悪いは関係ありません。プロセスそのものが倫理上問題ありということになります。

最悪のケースは,たとえば,当該専門家が売り手と顧問契約を締結していて,そこに自分が顧問を務める別の会社を買い手として連れてきたようなケースです(実務上,十分にありうるケースだと思います)。この場合,当該専門家としては,生き残る会社(=買い手)の方に無意識に(あるいは意識的に)肩入れしてしまう可能性が出てきます。たとえば,売り手側の創業者兼代表者が事業承継を考えていて株式を手放したいと思っているとき,通常,売り手側の顧問弁護士・会計士等は,その代表者が連帯保証をしていることに着目し,連帯保証を外す(担保の差し替え)ことを条件に案件を進めるよう努力すると思いますが,買い手側に意識が行ってしまうと,そこまでケアできない(連帯保証を外すために買い手側および金融機関とハードな交渉ができなくなってしまう)かも知れません。

ところが,その株式譲渡でいかに高額の対価を受け取ったとしても,株式を買い取った側の会社がうまく経営できず(あるいは意図的に資産を換価したりして)倒産ということにでもなれば,結局は,連帯保証債務が残っていることから,元代表者は会社もろとも破産に追い込まれ,せっかく受け取った株式譲渡代金も全て返上することになります。しかも,株式を手放し,代表者でもなくなった後は,もはや会社の経営に口出しできないわけですから,経営の立て直し努力すら行えず,なすすべはありません。

また,利益相反の悪影響は,「対価」の決定手続にも顕著に現れてきます。売り手側と買い手側で双方鑑定(バリュエーション)を取ればまだ救いはありますが,鑑定が一本しかなければ,やはり客観性・公正性に疑いが生じます。

上場会社では株主の監視の目があるため最近は「M&Aプロセスの適正」がかなり意識されていると感じますが(特にMBOのケースにおいて),非上場会社・中小企業のM&Aでも,きちんと「利益相反」を解消し,倫理上の問題がない状態で進めなければなりません。法律とか数字とかノウハウよりも,正しい倫理観の方が大切だと感じます。
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