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Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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独禁法上の持株会社規制

M&Aの際に必要な独禁法上の手続や問題についてはこれまでのエントリーで概要を紹介してきましたが,持株会社規制についてはまだ触れていなかったのでここで紹介しておきたいと思います。

持株会社規制については,独禁法9条に定められており,その内容は,「事業支配力が過度に集中」してはならないというものです。具体的基準については,公取委の「事業支配力が過度に集中することとなる持株会社の考え方」(以下,「9条ガイドライン」)が定めていますが,そこでは,規制対象として以下の3つの類型が挙げられています。

① 第1類型
 持株会社グループの規模が大きく(持株会社グループの総資産合計額が15兆円超),かつ,相当数(5以上)の主要な事業分野のそれぞれにおいて別々の大規模な会社(単体総資産額が3000億円超)を有する場合

② 第2類型
 大規模金融会社(単体総資産額が15兆円超)と,金融又は金融と密接に関連する業務以外の業務を営む大規模な会社(単体総資産額が3000億円超)を有する場合

③ 第3類型
 相互に関連性を有する相当数(5以上(*1))の主要な事業分野のそれぞれにおいて別々の有力な事業者(シェア10%以上又は売上高上位3位以内)を有する場合

戦前の財閥などであれば①に,巨大金融グループは②に,コングロマリット企業などは③に該当する可能性が出てきますが,純粋な分社化金融会社の相互参入のケースについては例外として禁止されませんので,ケースごとに弁護士に確認する必要があります。なお,持株会社設立が禁止される上記の類型に該当するにも拘らず手続を進めてしまった場合は,株式の処分や役員の辞任といった排除措置命令の対象となります(独禁法17条の2)。


(*1) 規模が極めて大きい事業分野に属する有力な会社を有する場合は,3以上
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日本企業同士のM&Aでも必要なSECへの登録(その3)

<日本企業同士のM&Aでも必要なSECへの登録(その1>においても書きましたが,M&Aに伴う米国居住者に対する株式発行に関しては、1933年証券法に基づきSECに対してForm F-4と呼ばれる登録届出書を提出しなければならないと定められています。その例外として,

① U.S. holderの株式保有割合が10%以下であること
② U.S. holderが対象会社の他の株主と平等に取り扱われること
③ 株主に対して一定の情報開示がなされること


を充たせば,Form F-4自体の提出は不要になりますが,上記のうち③の要件を充たすためには,Form CBと呼ばれる書類(&米国内における送達用代理人を選任するためのForm F-X)をSECに提出する必要があります。Form CBはForm F-4よりも作成が簡単な開示資料(日本の会社が当事者であれば,日本で日本の株主に配布する資料の英訳版にCBのカバーシートをつけて出すだけで足りる)でして,とりあえずこれを出させることで米国在住株主の利益保護を図るという構造になっています。

念のために,この辺りについて規定している33年証券法のRule 801を引用しておきます。

If the issuer publishes or otherwise disseminates an informational document to the holders of the securities in connection with the rights offering, the issuer must furnish that informational document, including any amendments thereto, in English, to the Commission on Form CB by the first business day after publication or dissemination. If the issuer is a foreign company, it must also file a Form F-X with the Commission at the same time as the submission of Form CB to appoint an agent for service in the United States.

The issuer must disseminate any informational document to U.S. holders, including any amendments thereto, in English, on a comparable basis to that provided to security holders in the home jurisdiction.

If the issuer disseminates by publication in its home jurisdiction, the issuer must publish the information in the United States in a manner reasonably calculated to inform U.S. holders of the offer.


規則上外国会社にForm CBの提出義務がある場合に,それを守らないという選択肢がありうるのかどうかについては,各社のコンプライアンスにも関わることですので何とも言えない部分がありますが,実務上は遵守されていないケースを見ることもあります(*1)。

また,(アメリカから見た場合の)外国企業によるBusiness Combinationについては最近ルール改正作業が行われており,2008年9月19日にSECが新ルールを承認し,その後60日以内に施行される予定になっています。その新ルールでは,10%ルールの計算基準日がフレキシブルになった(公表の60日前~30日後)ほか,Form CBとForm F-XはSECのEDGARシステムを利用してオンラインで提出することとされているなど,いくつか変更点がありますので,今後米国内株主を抱える会社がM&Aを行う場合には米国実務に携わる弁護士に問い合わせる必要があるでしょう。


(*1) 以下のリンクは,実際にSECに提出されたForm CBのサンプルです。
http://google.brand.edgar-online.com/EFX_dll/EDGARpro.dll?FetchFilingHTML1?ID=2045252&SessionID=Wo4oWS0AHfAJMg7

ディスカウントTOBの許容性

公開買付けで特定の大株主からだけ株式を取得したいときは,一般的に,ディスカウントTOBが用いられています。時代によって流行度合いの差はあるものの,これまでのデータを見ると,全TOBに占めるディスカウントTOBの割合が数割に達した年もあり,ディスカウントTOBは,上場廃止に至らないで大株主から株式を取得したい場合の便利な手段として用いられてきました。

また,会社法161条は,「市場価格を超えない価格による自己株式取得」を前提としていますので(この場合,他の株主に売主追加請求権を行使させずに特定の株主から相対で株式を取得することができる),ここでもやはり一種のディスカウント取引を認めていることになります。

ところで,こういった市場価格以下での株式売買については,売主側取締役の善管注意義務に反するのではないかという疑問が生じます。売主側取締役には,保有株式を含む会社資産について可能な限り高く売却する義務があるからです。実際に,フジテレビジョンが行ったニッポン放送株式の公開買付けに応じた東京電力に対し,東京電力の株主が,「ライブドアによる買付けの結果,(市場が動いて)買付価格が市場価格を下回ったにもかかわらず,応募を維持して株式を売却したのは善管注意義務・忠実義務違反である」と主張して株主代表訴訟を提起したケースがありました。

このケースは,当初から市場価格を下回る買付価格が提示されたわけではないという点で,計画されたディスカウントTOBではなかったかも知れませんが,結果としてはディスカウントTOB状態になりました。では,市場価格を下回る買付価格の公開買付けに応募することは許されるのでしょうか?・・・この点について東京地裁(東京地判平18・4・13判タ1226)は,市場価格を下回る買付価格の公開買付けに応募するか否かは「経営判断の問題」であると位置づけました。買付け価格は合理的である必要がありますが,何をもって買付け価格が合理的かを判断するに当たっては,裁判所は,単に値段が高い安いの問題だけではなく,要請元の企業やそのグループとの円滑な取引関係の維持や発展の要否など多様な諸要素も勘案する必要があると言っています。

その上で,東京地裁は,

① ニッポン放送株式の市場価格は買付価格を上回る価格で推移したものの,その差は1割程度であること
② 本件公開買付けに応じた目的が,経営上重要な取引先であるフジサンケイグループとの良好な関係の維持にあったこと
③ 本件買付価格は,公開買付け開始前の市場価格(3ヶ月平均)に約21%のプレミアムを加えた価格であったこと
④ ニッポン放送株式が上場廃止となった場合,株価が大幅に下落したり,換価が困難になる可能性を否定できないこと
⑤ 東京電力にとって,フジサンケイグループは大口の顧客であること
⑥ 東京電力の経営規模を勘案すれば,本件株式の処分が取締役会の決議事項に当たるとも解されないこと


といった要素を考慮した上で、東京電力の取締役の判断に善管注意義務違反は認められないと判示しました。

経営判断の原則というのは,要するにケース・バイ・ケースで判断しましょうということですので,買付価格と市場価格のバランスに留意しながらも,株式をその価格で手放す必要性と相当性に関し,訴訟になった場合に十分な攻撃防御ができるように準備しておく必要があると考えます。

公開買付けにおけるプレミアム(上乗せ率)の「流行り」

公開買付けには,いわゆるディスカウントTOBという,直近の市場株価よりも低い買付け価格を提示して公開買付けを行うパターンもありますが(これについては次のエントリーで書きます),通常は,公開買付けを公表する前の一定期間における平均株価に20%や30%といった上乗せを行った価格で買付けを行います。この上乗せの率については,国や時代によって流行りがあるようですが,日本の場合,昨日(2008年9月27日)付けの日経新聞によれば,2004年には平均9%だったプレミアムが,2007年には平均24%に上昇し,今年(2008年)は更に上がって年初から9月20日までの平均が48%となっているようです。

ただ,この48%という数字には,東宝がコマ・スタジアムを公開買付けによって子会社がした際の341%というプレミアムが含まれているため,これを例外的ケースとして外せば平均42%となるようです。また,上記日経新聞のデータは,TOB公表前3ヶ月のターゲット企業の終値平均と買付け価格を比較する方法で算出されていますので,「前日の終値」「1ヶ月の終値」「6ヶ月の終値」「1年間の終値」を基準にしたデータとは異なってきます。

続いて,日経のデータによると,TOBの中でもMBOに関しては更に強い上昇傾向を示しており,今年(2008年)9月25日までに公表されたMBO11件のプレミアム率平均は58%になっています。経産省の企業価値研究会が2007年9月に公表した<MBO指針>以前のプレミアム平均は28.5%だったとされていますので,その上昇傾向は顕著と言えます。これは,MBOに構造的に存在する買主(取締役)サイドの利益相反問題,売主・買主間の情報の不均衡問題から(レックス事件のような)トラブルに発展しないように,予め買取価格が高めに設定されるからだと考えます。

ただ,上記平均値については,冒頭で述べたように,その時期ならではの流行りという要素もあります。現在で言えば,株価の低迷です。市場株価が低く企業価値を反映していない場合は,プレミアムは拡大します。株を手放す株主から見れば高いプレミアムは有難いわけですが,高い買い物をしすぎたということにならないよう,プレミアムを抑えることも大事です。海外市場の平均は約30%とされていますので,これを基準に,対象会社やそのときどきの特殊事情を加味して決めればよいのではないでしょうか。M&Aにおけるプライシング全般については,また別のコラムで検討してみたいと思います。

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