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Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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自社株の買付け規制

最近,上場会社が自社株を大量に買取る場合の規制内容について質問を受けましたので,この機会に整理をしておきたいと思います。

発行会社といえども自社株を大量に買い付ける場合は公開買付け規制の対象となるというイメージがあるかと思いますが,ここでいう「公開買付け的」規制には,金商法上の公開買付け(金商法27条の22の2以下)と,会社法上の売主追加請求権(会社法160条以下)が含まれます。

自社株を相対で取得する場合の手続は,原則として株主総会の特別決議です(会社法156条,309条2項2号)。そしてこの場合,会社法160条は他の株主が自己も売主に追加することを認めるよう請求できるとしていますから,ここで一種の公開買付け類似の状態が発生します。ただし,会社法161条は,当該自社株購入の対価が市場価格未満であるときは160条を適用しないとしていますから,その場合に限り他の株主の売主追加請求権が排除されます。他方,株主総会特別決議ではなく「定款+取締役会決議」で自社株を取得する場合(会社法165条)は,そもそも相対取引ができませんので,買取る株式数が少なければ市場で買い付け,多ければ金商法上の公開買付けを行わければなりません。

以上を整理すると,以下のようになります。
規制の種類としては,①金商法上の公開買付けと②会社法上の売主追加請求権があって,

・ 定款+取締役会承認で大量の自社株買いを行う場合は,①は必要,②は不要
・ 株主総会の承認を得て相対で自社株買いを行う場合は,買い付け価格が市場価格未満であれば他の株主を害さないので,①②ともに不要,市場価格以上で買取る場合は①は不要,②は必要


となります。なお,自社株買いに限らずそもそも公開買付けが必要な場合については,<公開買付制度の概要(その1)>をご覧下さい。また,自己株式取得の方法としては,上記以外にも証券取引所を通じて行われる「事前公表型の市場内での取得」というカテゴリーが存在し,「終値取引(ToSTNeT-2)による買付」による取得や,2008年1月15日から始まった「自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)による買付」(*1)の利用頻度が増えているようです(例えば,タカラトミーは,2008年8月26日付けで,東京証券取引所のToSTNeT-3を利用して、大株主で資本・業務提携関係にあったインデックス・ホールディングスから約570万株を取得しました)(*2)。


(*1) 詳細は,http://www.tse.or.jp/rules/stock/guideline/jikokabuqa.pdf
(*2) これら立会外取引(ToSTNeT)も,金商法上の公開買付規制の対象となります。
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MBOに関する論点整理①~総論~

レックス事件の東京高裁決定が先日(平成20年9月12日付け)出ました。また、最近の新聞に、MBO(*1)後の経営が予想よりも上手く行っていない会社が多いという記事が載っていましたので、今回からはしばらくMBO(従業員も新経営陣や出資者に加わるMEBOも含む)について扱ってみたいと思います。

そもそもMBOは、「市場における短期的圧力を回避した長期的思考に基づく経営の実現」などを企図して行われると一般的には言われます。しかし、実際にはそれほど甘くはありません。現経営陣や従業員が全額出資できるケースはまず存在しませんので、必ずスポンサーが入ってスポンサーとの間で株主間契約を締結することになり、経営の自由度はその中で制限されることになります。また、現在市場に出回っている株式を買い取る資金を借入れるために締結する金銭消費貸借契約の中には厳しい財務コベナンツ条項が入れられ、上場廃止後にもそこで課された利益目標に到達できるよう相当頑張らなければなりません。新会社は多額の借金を抱えてスタートすることになりますから、借入れ利息の支払い義務も相当な重荷になります。そもそもスポンサーは、再上場等によって投下資本の回収を図ることをゴールに設定していますので、結局は、お目付け役が従前の不特定多数の株主から特定の金融投資家に変わっただけで、しかも再上場の予定日が3年後といった比較的近いところに設定されるため(*2)、余計に「長期的思考に基づく経営の実現」が難しくなるという問題点もあるわけです。

MBOには従前から言われている「情報の非対称性から来る株主の不利益」の問題や「経営陣と会社(株主)との利益相反」の問題など、主に株主保護の観点から出てくる多くの問題点があるわけですが、経営陣としては、それ以前に、上で述べたようなMBOのデメリットを認識した上でなおメリットの方が大きいのかどうかを精査しなければなりません。

さて、MBOがベストな選択肢であると経営陣が判断した場合でも、構造的に存在する利益相反問題を解決するためにクリアしなければならないハードルがあります。この利益相反問題について正面から取り扱い一定の方針を示唆しているのが、平成19年9月4日に経産省が発表した<「企業価値の向上及び公正な手続確保のための経営者による企業買収(MBO)に関する指針」>(以下、「MBO指針」)ですが、現時点でも最新の指針ですので、この機会におさらいをしておきたいと思います。

MBO指針は、MBO を行う上で対象会社が尊重すべき原則として、以下の二つの原則を挙げています。

【第1原則】 企業価値の向上(望ましいMBO か否かは、企業価値を向上させるか否かを基準に判断されるべきである)
【第2原則】 公正な手続を通じた株主利益への配慮(MBO は取締役と株主との間の取引であるため、株主にとって公正な手続を通じて行われ、株主が受けるべき利益が損なわれることのないように配慮されるべきである)

もちろんこれだけでは会社が具体的に何をすべきかが明確ではありませんので、MBO指針は具体的な方策を例示列挙しています。これについては次回以降のコラムで順に説明していきたいと思います。


(*1) MBOとは、「現在の経営者が資金を出資し、事業の継続を前提として対象会社の株式を購入すること」と定義されています(企業価値報告書2006)。
(*2) 東証の<「新規上場の手引き」>では、非上場から再上場申請日の直前の事業年度の末日までの期間が「3か年以上」必要とされています。

お詫びとお願い

今まで多くの方からコメントを頂戴しておりますが、最近は迷惑サイトが世の中のブログにランダムにスパム的コメントを書き込むケースが増えていますので、すべて非公開とさせていただいております。しかし、他方で、このブログには、非公開コメントに対して返信する機能が存在しないようで、今まで一件も返信できておりません。質問を書いたのに反応がないと思われていた皆様、申し訳ございません。
そこで、今後につきましては、ご質問、ご意見等をいただける場合には、このブログのプロフィール欄記載の私のメールアドレスまでメールを頂戴できれば幸いです。お手数をお掛けしますが、よろしくお願いいたします。

会社分割に関する論点②~移転事業の範囲~

2 会社分割の対象

続いて、「分割する対象(資産や負債)は自由に決めてもよいのか」という質問について検討したいと思います。

旧商法時代における会社分割の対象は「営業の全部または一部」でした。ここで言う「営業」とは、営業譲渡の場合の「営業」に関する判例の表現と同じく、「一定の営業目的のために組織化され、有機的一体として機能する財産」を意味するとされ、ただ、営業譲渡の場合には要求される「営業譲渡の結果、譲渡会社が競業避止義務を負う結果を伴うもの」という要件については、会社分割の場合には不要ではないかという見解が有力であったように思います。

しかし、そもそも「有機的一体性」という概念はあまり明確ではなく、かつ、競業避止義務を負わない場合でも当事会社がともに株主総会の承認などの組織法上の手続を経て行った以上、当該会社分割を無効とする理由はないように思います。

そこで、(厳密には、依然、競業避止義務要件は残っているとする見解もありますが)会社法では、会社分割の対象における「営業」という概念を緩和し、「その事業に関して有する権利義務の全部又は一部」(会社法2条29号、30号)を会社分割の対象にできることにしました。ただ、事業との関連性をどこまで要求するかについては固まった見解がありません。例えば、オートバイメーカーが会社分割によってオートバイ製造事業を切り出そうとしているときに、工場とは全く別の場所にある不動産を一緒に承継させることは可能でしょうか?・・・この場合、「その不動産を売却した資金をオートバイ製造事業に充てる」と言えば「事業」との関連性があるとも思えますし、そもそもオートバイ製造事業とは関連がなかったのだから承継不可と考える人もいるでしょう。

私自身は、会社分割の対象を拡大した今回の会社法改正の趣旨を踏まえると、事業との関連性については相当緩やかに解してよいと考えています。おそらくはそれが実務における当事会社の希望とも一致するところでしょう。ただ、本来、「財産を他の会社に移転して株式の発行を受ける」という行為は現物出資に該当し検査役の調査を受けなければならないところを、要件を緩和して事業の移転を行い易くしたのが会社分割ですから、現物出資規制の潜脱であるとの批判を受けないようにしなければなりません。よって、事業との間接的関連性すら存在しない資産や負債を寄せ集めて他の会社に移転する行為をもって会社分割であると呼ぶことはできないと言うべきでしょう。

会社分割に関する論点①~債務超過のケース~

リーマンブラザーズ破綻のニュースが金融界だけでなく世界中を駆け巡っていますが、それはさておき、ニューヨークから送ったM&A関連の文献や資料が昨日ようやく手元に届きましたので、ブログを再開したいと思います。

仕事上、ときどき、「債務超過の場合にも会社分割ができるのか」「分割する対象(資産や負債)は自由に決めてもよいのか」という質問を頂戴します。そこで、以下、簡単に検討してみたいと思います。

1 債務超過と会社分割

ここで「債務超過」と言う場合、①会社分割の結果分割会社が債務超過になってしまうケース、②承継会社に移転する負債が資産を超過しているケース(すなわち承継事業そのものが債務超過となる場合)の2パターンが考えられます。

①については、旧商法時代には、債務超過だと「債務の履行の見込みがあること」という要件(旧商法374条ノ2第1項3号、374条の18第1項3号)を充たさないので、100%親子会社間の無増資組織再編などの例外的ケースでなければ認められないという見解が有力だったわけですが(*1)、会社法においては、開示書類として分割会社の「債務の履行に関する事項」を準備すれば足りることとされましたので(すなわち、債務の履行の見込みがないことを開示しても構わない)、現行法上は、分割会社が分割の結果債務超過になる会社分割も認められています。現実の必要性を考えても、不採算部門を残して優良事業部門のみを切り出したいと考えるケースは数多くありますので、実務の要請に法律が合わせたと言えます。

なお、簿価上の債務超過にとどまらず、資産の含み益や営業権を反映させてもなお債務超過状態にある場合(=実質的債務超過の場合)には、債権者保護の観点などから会社分割を認めるべきでないとする見解もありますが、そもそもそこで行われる資産の再評価や営業権の計上には確立された評価基準が存在するわけではありませんので、「実質的債務超過かどうか」をメルクマールとして組織再編の有効性を判断することは適切ではないと考えます。また、債権者保護の要請については、別途用意されている債権者保護手続で満たされていると言うべきではないでしょうか。

続いて、②のケースについては、通常は会社分割の結果として承継会社が分割会社に株式を発行するわけですから、資本充実の観点から資産>負債になっていなければならないと考えるのが自然であり、実際に旧商法時代には「債務超過状態の事業の分割」は原則として認められていませんでした。しかし、会社法では、対価を交付しない会社分割も認められることとなり、会社分割により差損が生じる場合、すなわち、①承継会社が承継する負債の簿価が資産の簿価を超える場合、または、②会社分割に際して交付する対価の承継会社における簿価が当該会社分割により承継する純資産額を超える場合にも、その会社分割を承認する株主総会で当該状況を説明することによって会社分割が認められることになりました(会社法795条2項)。多様な会社分割を必要とする会社のニーズを満たしつつ、債権者については、会社法上の債権者保護手続(その手続の対象となっている債権者の場合)と、民法上の詐害行為取消請求権(会社法上の債権者保護手続の対象になっていない債権者の場合)によって保護する(この場合、会社分割そのものは無効にはならない)という構造ができあがったわけです。

次回は、会社分割における承継事業の範囲について検討したいと思います。


(*1) 資産の含み益等を勘案して実質的に債務超過でない場合には、債務の履行の見込みがあるとして有効とする見解もありました。

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