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Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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政府系ファンド(SWF)を巡る最近の動き

EUの行政執行機関である欧州委員会(EC)は、2008年2月27日、「政府系ファンド(Sovereign Wealth Funds)の行動基準(Voluntary Code of Conduct for Sovereign Wealth Funds’ Investment)」を定め、公表しました。最近の報道によれば、政府系ファンドは2000年には20ファンドを数える程度でしたが、近年40ファンド程度まで倍増し、その資金規模も約6倍の2兆5000億ドルに急膨張しているとのこと(*1)。特に、昨年(2007年)11月頃からは、アラブ首長国連邦、中国、サウジアラビア、シンガポール等の政府系ファンドが、サブプライムローン問題で財務状況が悪化している大手金融機関や世界的投資銀行等に対して数十億ドル規模の投資を行っています(*2)。

これに伴い、最近、二つの動きが出てきています。一つは、世界第2位の外貨準備高(2008年2月末時点で1兆79億8100万ドル)を保有する日本でも、政府系ファンド設立の動きが出てきているということと、中東や中国の政府系ファンド首脳の来日後、日本の大手証券会社がSWF対応を目的とした専門部署を立ち上げ始めていることです。中東やアジアの政府系ファンドは、日本の技術やノウハウを得るために日本企業に対する投資を拡大していく方針を発表していますので、今後、政府系ファンドが抱える巨額資金を利用したM&Aが海外でも日本でも増加するものと予想されます。

もう一つの動きは、「スーパー・ヘッジファンド」と呼ばれることもあり通常のヘッジファンドよりも遙かに大きな資金規模を有する(*3)これら政府系ファンドに対して規制を求める動きです。政府系ファンドは、これまで情報開示を避ける傾向が強く、投資先や運用資産額について一切明らかにしないケースも見られました。よって、ハイテク、軍需、エネルギー企業等を傘下に収められることを恐れる各国が、他国の政府系ファンドに対する規制を強めるために動き始めたという次第です。例えば、中国アルミ業公司(チャイナルコ)は、英豪系BHPビリトンによるオーストラリアの石炭鉱山大手リオ・ティント買収提案に対抗するため、CICから1200億ドルの資金を利用する見通しであるとの報道がなされていますが、これに対して、オーストラリア政府は、政府系ファンドに対して投資活動の透明性を強力に求める方針を打ち出しました。冒頭に述べたECによるSWF行動基準の発表も、これら規制を求める動きの一環といえます。

ECが発表し、EUで投資を行う政府系ファンドが自主的に遵守することを求めているこの行動基準においては、リスクマネジメント・ポリシー、ファンドの投資目的を明示するインベストメント・ポリシー、責任の分配と所在を明確にするポリシーの制定を求めているほか、投資先や資産分配先を毎年開示することも要求しています。

投資先国家による規制が強化されることを嫌うのであれば、SWF自身が、ベスト・プラクティス・ルールを策定し、投資先国家に対して自主的に情報開示を行うとともに、ガバナンス体制を強化していくべきだと考えます。

【関連報道】
http://www.ft.com/cms/s/0/8e027d76-e175-11dc-a302-0000779fd2ac.html
http://www.euractiv.com/en/trade/eu-plans-code-conduct-sovereign-wealth-funds/article-170503
http://www.nytimes.com/2008/02/09/business/09sovereign.html

(*1) 歴史的に最も古いのは1953年に誕生したクウェートのファンドですが、多くの政府が自らファンド設立に動き始めたのは2005年以降のことであると言われています。SWFの例としては、中国の中国投資有限責任公司(CIC)や、ソニーへの大型投資実績があるアラブ首長国連邦のドバイ・インターナショナル・キャピタル(DIC)等。
(*2)  2007年12月、中国のCICはアメリカの証券大手モルガン・スタンレーに対して50億ドルの出資を表明。また、アブダビ投資庁は、シティー・グループに対して75億ドルの資金注入を行いました。
(*3) 世界のSWFの総資産は2010年までに5兆ドルを超え、さらに2015年までには、その倍以上の12兆ドルにまで膨れあがると予測する専門家もいます。なお、ヘッジファンドの預かり資産は、現時点で、1兆6000億ドル程度といわれています。
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