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Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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独立取締役/特別委員会に関する議論について(その6)

前回整理したとおり、アメリカの特別委員会については、
① 会社法に基づき、正式に交渉権限や判断権限を委譲される、
② 委員は取締役の中から利害関係のない者が選ばれる、
③ 外部専門家はアドバイザーとして特別委員会の外からアドバイスを行う、
④ 特別委員会を使用した場合の効果が判例法上明確になっている、
⑤ 判例法上、最終判断権限のない特別委員会には立証責任の転換等の効果が与えられないことが明確にされつつある、

といった特徴が挙げられることになります。

他方、日本では、
① 任意に設置された特別委員会に交渉権限や判断権限を委譲する法的根拠がない、
② 特別委員会の委員は取締役会の外からも広く選ばれている、
③ 外部専門家が委員そのものに就任することが多い、
④ 特別委員会を使用した場合の効果が判例法上明確にされていない、
⑤ 特別委員会の判断に拘束力を与えるべきケースが判例上明確になっていない、

という状況にあります。

これでは混乱が発生するのもやむを得ないと感じますが、それでも日本で特別委員会は普及しつつあります。それは、前述のように、経産省・法務省の指針や企業価値研究会の報告書において、特別委員会の設置が推奨されているからであり、また、機関投資家や議決権行使助言機関が、特別委員会とセットの買収防衛策であれば賛成に回る可能性があることを表明しているからであると考えます。ブルドック事件最高裁判決が、防衛策の是非は株主総会が決定すべきとしたことから、ほとんどの企業が防衛策導入ないし発動に当たって株主の承認を得るようになると予測しますが、そうであれば「株主の同意を得るために特別委員会を利用する」という発想も出てくるわけです。株主総会さえクリアすれば裁判所もクリアできると考える当事者、アドバイザーも多いでしょう。

しかし、特別委員会が、取締役会内部の利益相反問題を解決するために生み出された制度であることを忘れてはならないと思います。個々の委員の「独立性」が徹底していなければならない(すなわち、「社外」取締役や「社外」監査役という概念では足りない)のはもちろんですが、仮に委員の独立性が確保されていたとしても、特別委員会の判断結果に拘束力があるか、利益相反取締役の意思を排除したと評価できるだけの体制が整っていない限り、特別委員会は「利益相反問題を解決する道具」にはなりきれないと考えます。

現在、特別委員会の構成については、
「企業価値を毀損するか買収提案かどうかについての判断は本来業務執行の範囲に属するから、社外監査役は委員にすべきでない。」
「企業価値を毀損するか買収提案かどうかについての判断は業務執行の範囲には属しないから、社外監査役は委員にしてもよい。むしろ社外監査役を中心に構成すべきだ。」
「特別委員会の中立性を確保するために、社外取締役を委員から排除すべきだ。」
「社外取締役でも社外監査役でもない社外者の委員については、防衛策とセットで株主総会に提示し、その信任を得ておく必要がある。」
といった意見が出ていますが、独立取締役制度の存在しない日本において性急に特別委員会を普及させたために発生した制度のひずみを何とか人選でカバーし、足りない部分は株主の信任を得るというプロセスでフォローしようとしている状態であることが分かります。しかし、本来、委員の独立性の問題/委員の判断能力の問題と、特別委員会の権限・効果の問題は別の議論ですので、後者について、制度的な解決がなされない限り、どのような人選を行っても、裁判所の事実認定に与える影響は小さいままだと考えられますし、仮に株主総会が人選について承認したとしても、会社の役員でない委員に関して株主が事後的に善管注意義務違反を問えるわけではありませんので、その承認に利益相反問題をクリアさせるだけの効果を与えることはできないと考えます。

利益相反というのは、具体的にはその取引に利害関係を有する業務執行者と株主の利益相反、あるいは、支配株主(およびそれと利害を共通にする経営陣)と少数株主の利益相反です。社外独立チェック型ではない日本の取締役会や現状の特別委員会ではこの利益相反問題を解決できないと踏んで、裁判所は利益相反問題で損害を被る株主自身に直接意思決定をすることを求めています。取締役会も公正な判断が期待できない、裁判所も経営判断は行い難い、よって、株主に任せるしかないという流れです。しかし、株主といっても、多数派株主に少数株主の利益を考えた判断を要求することは困難ですので(アメリカと異なり支配株主に善管注意義務が課せられていない日本では尚更)、少数株主の利益保護が問題となっているようなケースでは、少数株主の過半数同意を要求するといったところまで整備しなければ万全とはいえないと考えます。

①支配株主が関与する取引、②会社の売却、③買収提案を受けている中での防衛策の発動といった利益相反リスクが高い場面(アメリカではいずれもBusiness Judgment Ruleの適用が否定されている場面)においては、特別委員会を設置し、その判断を「最大限尊重する」だけでは、裁判所において公正な取引であったとの認定を受けられる可能性は保証されていないと考えるべきでしょう。独立取締役制度が存在しない以上、株主総会の承認というプロセスを利用せざるを得ない場面も出てくると考えますが、その場合でも、株主総会を経たから安心と考えるべきではなく、不利益を被る株主のInformed Judgmentを得るために万全の準備をしなければならないと考えます。

なお、アメリカでは、特別委員会は、文字通り特別なケースにおいてしか設置されません。アメリカで独立委員会が利用されるようになったのは1970年代と言われていますが、独立委員会が利用されてきたのは、取締役の過半数が利益相反状況にある場合であり、具体的には、①MBO、②親子会社間の合併、③株主代表訴訟などのケースに限られていました。独立委員会が一旦設置されると相当の費用が発生するほか、「利益相反のある取締役グループ」と「特別委員会を構成する取締役グループ」がいずれも善管注意義務(損害賠償リスク)の下で真剣に判断し、交渉を展開する結果、両者の間に将来修復できない溝が発生する可能性すらあります。更には、「特別委員会を設置した」という事実のみで、裁判所から取締役会の利益相反性が疑われる可能性もあります。よって、アメリカのローファームは、メンバー選択はもちろんのこと、特別委員会の設置そのものに対してかなり慎重であると言えます。
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独立取締役/特別委員会に関する議論について(その5)

経産省・法務省の買収防衛策指針において、特別委員会が防衛策発動の是非を判断することが推奨されている結果、ここ2年間に公表された事前警告型買収防衛策においては特別委員会の設置を含むものが相次ぎました。特別委員会の構成については、
① 社外監査役+社外者
② 社外者のみ
③ 社外取締役+社外監査役+社外者
④ 社外取締役+社外監査役
⑤ 社外監査役のみ
⑥ 社外取締役のみ
といったパターンに分けられますが(①と②の割合が大きい)、ここで社外取締役と社外監査役が多く登用されているのは、<平成17年5月27日付け「企業価値報告書」>が、以下のように述べていることの影響であろうと考えています。

【(法律上の責任と権限のある社外取締役や社外監査役の判断の重視)
第三者は、会社(株主)に対する責任と権限を有しているほど、合理性が高まり、株主などの支持を集めやすい。この点に関して、社外取締役は他の取締役と同様に、株主総会で選任され、会社に対する善管注意義務と忠実義務を負い、業務執行の決定権限を有する取締役会の構成員である。
社外監査役は、株主総会で選任され、会社に対して善管注意義務を負い、取締役会で違法又は著しく不当な決議がなされる場合には意見を述べる義務を負い、取締役の法令・定款違反行為の結果、会社に著しい損害を生じるおそれがある場合には、その行為の差し止めを請求することができる。また、任期が4年である、選解任に関して監査役会の意見が反映されるなど、その法的地位には、業務執行者からの高度の独立性が商法の規定によって担保されている。さらに、会社が取締役に対し訴訟を提起する場合の会社側の代表権限を有する、取締役に対する責任減免や代表訴訟における訴訟上の和解に対する同意権が付与されているなど、株主の利害と経営者の利害とが相反する局面において間に入る機能も付与されている。
これらの意味で、まずは、社外取締役や社外監査役が有事における防衛策の維持解除の判断を担うことが合理的な方策となる。そして、社外取締役や社外監査役の判断を重視して、取締役会が防衛策の維持解除を決定する仕組みを明確に導入することが必要となる。】


さて、誰が特別委員会の委員として適切かという問題を考える前に、特別委員会の位置付けとその効果について考えてみたいと思います。なぜなら、特別委員会については、ニレコ東京地裁決定において、「特別委員会の勧告を最大限尊重して取締役会が決定するという仕組みは、取締役会が勧告に従わない余地を残している以上、取締役会の恣意的判断を防止する仕組みとはいえない」と判断され、このような考え方に対して「そのとおりである。最終的に独立性に疑問のある取締役会が判断するのであれば、欠陥防衛策である。」という支持意見(*1)が出てきた一方で、「特別委員会は取締役会の単なる諮問機関であるから、その判断は法的に意味を持たないし、善管注意義務を負う取締役が善管注意義務を負わない特別委員会の判断に拘束されることは問題である。」という反対意見(*2)も度々耳にするからです。

確かに、特別委員会の委員は、結果として社外取締役や社外監査役が務めることがあったとしても、株主総会で改めて選任されるわけでもなく(逆に言えば、現経営陣が依頼するケースが多い)、取締役や監査役という地位を離れて会社法上の責任(善管注意義務)を負担するわけでもありません(そこで、次善の策として、会社との間で、善管注意義務を盛り込んだ契約を締結するのが最近の流行)。すなわち、特別委員会は会社法上の根拠を有しない任意機関であり、業務執行に関する決定権限は(取締役会設置会社の場合)完全に取締役会に残されています。
では、このような特別委員会の位置付けや効用についてどう考えればよいのでしょうか。特別委員会制度もアメリカからの輸入品と言えますので、ここで再度、アメリカ(デラウエア州)の状況を整理しておきたいと思います。

まず、アメリカでも、特別委員会が当然に拘束力のある最終判断権限を有しているわけではありません。デラウエア州会社法上、取締役会全体で判断しなければならない事項(合併、資産譲渡、定款変更など)が定められており、少なくともこれらの重要事項については特別委員会に最終決定させるわけにはいきません。ただし、デラウエア州会社法§141(c)は、

"to the extent provided in the resolution of the board of directors [creating the committee], or in the by-laws of the corporation . . . may exercise all the powers and authority of the board of directors in the management of the business and affairs of the corporation . . . "

と規定していますので、特別委員会を組成する際の取締役会の決議または付属定款で定められた範囲内において、取締役会の判断権限を特別委員会に委譲することが認められています。この点、日本の会社法においては、取締役会が委員会設置会社の委員会ではない任意設置の委員会に権限を委譲できると定める規定が存在しませんので、特別委員会については判断権限を付与する法的根拠がないことになり、ここに最初の違いが発生します。

続いて、アメリカでは、「特別委員会の判断に拘束力を持たせなければ、特別委員会に期待されている効果は付与することができない」と判示されたケースが複数存在します。有名なのは、Going Private取引に関するKahn v. Lynch事件(*3)です。この事件で裁判所は、「特別委員会は、一般株主にとって最大利益となる取引のみを承認し、それ以外の取引については拒絶できる権限を有していなければならない」(*4)としました。ニレコ地裁決定は、この判例の影響を受けた可能性があります。

前提知識として、デラウエア州の判例法理によれば、特別委員会については、

① 支配株主(controlling stockholder)が存在しない取引で特別委員会を利用すれば、審査基準がEntire Fairness StandardからBusiness Judgment Ruleに変更される。
② 支配株主(controlling stockholder)が存在する取引で特別委員会を利用すれば、審査基準はEntire Fairness Standardのままであるが、Entire Fairness(が存在しないこと)の立証責任が原告側に転換される。


という効果があります。Kahn v. Lynch事件は後者のケースでした。よって、Kahn v. Lynch事件に当てはめると、仮に、特別委員会の判断に拘束力を持たせなければ、立証責任の転換という効果を得られないことになります。立証責任の転換といえば単にプロセスの問題であるかのようにも聞こえますが、実際は原告側に立証責任が転換されてもなお取締役側が敗訴したケースはほとんど聞いたことがありません。実務上は、勝訴・敗訴をはっきり分けるほど重要な効果だと言ってよいと考えます。よって、アメリカのM&A実務では、とりわけGoing Private取引の場合には特別委員会に拒否権を与えるとともに、特別委員会が拒否権を行使するのをためらうような脅しの存在や力関係上の問題点を裁判所に指摘されないように細心の注意を払います。

また、別の例として、会社の売却について検討するための特別交渉委員会が設置された場合には、多数派株主や利害関係ある取締役が契約書の文言や条件について指示をすると、やはり特別委員会の効用を奪われてしまいます。よって、特別交渉委員会については、①真の交渉力を備えていることと、②多数派株主が契約書の条件を指示しないことが求められています(*5)。いずれにしても、特別委員会を利用することの意味・効果と、特別委員会が有していなければならない権限が明確になっています。

更に、デラウエア州判例法上、特別委員会には、独自の判断で外部の専門家アドバイザーを雇う権限が付与されていなければならないと言われています。よって、実務でも必ず社内のGeneral Counselとは別に外部の法律事務所が関与します。しかし、彼らは特別委員会の委員になるわけではありません。

まとめますと、アメリカの特別委員会については、
① 会社法に基づき、正式に交渉権限や判断権限を委譲される、
② 委員は取締役の中から利害関係のない者が選ばれる、
③ 外部専門家はアドバイザーとして特別委員会の外からアドバイスを行う、
④ 特別委員会を使用した場合の効果が判例法上明確になっている、
⑤ 判例法上、最終判断権限のない特別委員会には立証責任の転換等の効果が与えられないことが明確にされつつある、

といった特徴が挙げられることになります。

他方、日本では、
① 任意に設置された特別委員会に交渉権限や判断権限を委譲する法的根拠がない、
② 特別委員会の委員は取締役会の外からも広く選ばれている、
③ 外部専門家が委員そのものに就任することが多い、
④ 特別委員会を使用した場合の効果が判例法上明確にされていない、
⑤ 特別委員会の判断に拘束力を与えるべきケースが判例上明確になっていない、

という状況にあります。

次回のコラムでは、これらの違いに関して更に検討を続けてみたいと思います。


(*1) http://www.nobuosayama.com/ithink/archives/2005/06/index.html
(*2) 例えば、山田剛志・金融商事判例1219号8頁など。
(*3) Kahn v. Lynch Communications Systems, Inc., 638 A.2d 1110 (Del. 1994)
(*4) ”a special committee of the target's independent directors was empowered to negotiate and veto the merger”
(*5) Rabkin v. Olin Corp., C.A. No. 7547, 1990 WL 47648, Del. Ch.(1990)

独立取締役/特別委員会に関する議論について(その4)

さて、独立取締役とは、当該企業およびその親子会社またはそれらの経営陣との間で、自己または自己の近親者が特定の利害関係(雇用関係や取引関係など)を有していないことを指し、会社法が定める「社外取締役」の概念とは異なり、実質的に判断すべき部分が大きいものということで、概ね理解の一致が得られているように思います(*1)。その中でも、独立性の要件を厳格に規定する方向へ既に動いたのがエンロン事件を経験したアメリカであり、その辺りは議論が固まるまでもうしばらく様子を見ようというのが日本の現在の状況だと考えますが、社外取締役・社外監査役の独立性判断に関係する事実の存在(人間関係、資本関係、取引関係など)は、既に有価証券報告書の開示項目に含まれていますし、金融庁はNYSE型あるいはそれに近い形で独立取締役の要件を設定することを検討していると思われますので、日本において「独立取締役」という概念が定着するのも時間の問題だろうと感じます。このようにしてアメリカ型コーポレート・ガバナンスが留まることなく日本に流入してきているわけですが・・・、アメリカ型コーポレート・ガバナンスとは、少なくとも現時点においては「株主利益の飽くなき追求から導かれる合理的制度の数々」であり(判例や州法は必ずしもそうではありませんが、企業側の認識として。)、その結果、多くの投資家・企業・経営者が「高株価経営」というマジックワードに心を奪われています。「独立取締役」という制度一つを取り上げてみても、日本は、世界のキャピタル・マーケットを最大限有効活用したいと考えているステイクホルダーの存在を忘れることなく、「モノづくりと貯蓄」をベースに堅実な経済発展を遂げてきた国として、自らの適性をよく考えてベストな手法を導入しなければならないと感じさせられます。

「アメリカ型コーポレート・ガバナンスの輸入」といえば、2003年の商法特例法改正によって導入された委員会等設置会社(会社法下における現在の名称は「委員会設置会社」)です。当時は、商法特例法上の大会社のみが導入することができましたが、2006年に施行された会社法によって、定款に委員会を置く旨の定めを設けることで、その規模を問わず委員会設置会社を選択できることになりました。委員会設置会社には取締役会と執行役が置かれ、取締役会の中には指名委員会、監査委員会、報酬委員会という3つの委員会が設置されます(*2)。その一方で、監査役(監査役会)を設置することはできません。この仕組みはまさにアメリカの会社統治の仕組みと同じです。アメリカでは、SP500社(*3)の100%が監査委員会を設置し、報酬委員会は99%、指名委員会は88%程度設置されていると言われています。そして、いずれの委員会においても、独立取締役が80~90%超を占めています。日本もいずれ同じような状況になるのでしょうか。

日本では、アメリカと比べて経営者の労働市場が流動的でないため監督能力を有した社外取締役を数多く確保できるのかが危惧されており、また、執行役・委員・取締役の兼任が一部において認められていることから、業務の執行と監督が分離しきれていないという指摘もあります(つまり、取締役と独立した監査役を置く従来型の方が有効ではないかという議論)。更にアメリカの独立取締役と異なり、親会社や取引先の関係者など、執行役からの独立性が疑われる者も社外取締役の資格を満たすため、社外取締役による監視機能の実効性には疑問があるとの批判もあります。しかし、経営者市場が発達していないという点は時の経過を待つほかないとしても、残り2つの批判については、独立取締役の要件を明確に定め、NYSE規則のように監査委員会と報酬委員会は全委員が独立取締役でなければならないと定めることによって、あるいは、ドイツのように執行役と取締役は兼任することができないと制度変更することによって解決することが出来ます。したがって、これまでの経緯を観察する限り、今後の日本は、上記のいずれかの方向に流れていくように思われます。今回の会社法制定によって、公開株式市場を利用しないような小さな会社に対する取扱いが定められた一方で、会社の規模に関係なく委員会設置型を選べるようになりました。この変更は、少なくとも市場で株式を流通させる公開会社についてはアメリカ型企業統治体制を浸透させるステップの第一歩になる可能性があると考えています。

話題が逸れてしまいましたが、独立委員会の構成、効用などについては、次回のコラムで改めて述べたいと思います。


(*1) <平成17年5月27日付け「企業価値報告書」>は、以下のように述べています。
【独立性とは、防衛策の是非をチェックする社外取締役と社外監査役が、内部取締役の保身行動を厳しく監視できる実態を兼ね備えるために要求される概念であり、会社との実質的な独立性が要請される。例えば、主要取引先、顧問アドバイザー、メインバンク等の債権者、親族、元従業員などは、防衛策を監視する「独立社外者」として適正か否かについて、その実態を慎重に精査し、株主の納得と理解が得られるものでなければならない。
独立性の議論は、制度としては試行錯誤を続けている状況だが、要は、取締役の保身行動を厳しく監視できる実態を兼ね備えていることが重要であり、会社との実質的な独立性が最も問われることとなる。防衛策の是非をチェックする第三者のあり方について、社外取締役と社外監査役を軸に、独立性を確保するような自主的な工夫が必要である。例えば、取締役会に占める社外取締役の割合が少ない場合、独立性のある社外取締役や社外監査役の意見が十分反映され得る企業統治委員会を組織し、有事においては、買収防衛策の発動について、この委員会の勧告を尊重するといった工夫が必要となる。
今後は、こうした各企業独自の工夫に加えて、第三者の要件についてルール化の検討も急がねばならない。】
(*2) 各委員会の決定は拘束力を持ち、委員会を構成する取締役の過半数は社外取締役でなければならないとされています。しかし、取締役と執行役の兼任は許されていますので(会社法402条6項。これはアメリカでも同様。)、執行役が委員を選解任する取締役会のメンバーの多数を占め、かつ、監査委員会を除いて(400条3項)、委員会の中にも50%未満であれば執行役が入り込むことができます。この点、アメリカのNYSE規則は、監査委員会と報酬委員会は全委員が独立取締役でなければならないと定めていますので、日本の委員会では、独立性が徹底されていないことが分かります。
(*3) Standard & Poor's 500 Stock Indexに含まれる500社

独立取締役/特別委員会に関する議論について(その3)

前回はNYSEが定める「独立性」テストについて紹介しましたが、アメリカにおける「独立性」の基準がNYSEのマニュアルに記載されている一種類しか存在しないわけではありません。例えば、<NASDAQマニュアル>のRule 4200では、「過去3年間」「10万ドルの報酬」といった数値はNYSEマニュアルと同様ですが、「会社の売上の2%または100万ドル以上の大口取引先の従業員ではないこと」というNYSE基準については異なる数値が設定されています。また、判例の中には、取締役が報酬を受領していた点を問題にするもの(Kranser v. Moffett 826 A.2d 277 (Del. Supr., 2003))、取締役が受ける非金銭的利益や交友関係・社会的関係にも注目するもの(In re Oracle Corp. Derivative Litigation, 824 A.2d 917 (Del. Ch.2003))などがあり、裁判所が多くの要素を考慮して「独立性」に関する実質的な判断を行っていることが分かります。

これに対して、日本における議論の状況はどうでしょうか。最近の日本では、「敵対的買収時における独立取締役の役割」と「MBOにおける独立取締役の役割」という2つのトピックの中で独立取締役の議論が展開されることが多いため、この2つに関して順番に書いていきたいと思います。

1. 敵対的買収時における独立取締役

経産省と法務省は、平成17年5月27日付け<「買収防衛策指針」>の中で、

(独立社外者の判断の重視)
「買収の開始後に買収防衛策としての新株予約権等を消却するかどうかの判断は、その対象が高度な経営事項を含む可能性がある一方で、内部取締役の保身行動に左右されるという特徴を有する。したがって、会社の経営事項を理解できる社外者が、株主には入手困難な企業秘密等の情報も入手した上で、買収提案等を評価することには合理性がある。さらに、内部取締役の保身行動を厳しく監視できる実態を備えた独立性の高い社外取締役や社外監査役(独立社外者)の判断を重視するよう設計しておけば、株主や投資家に対し、取締役会の判断の公正さに対する信頼を生じさせる効果があり 、こうした社外者と会社との間の独立性が高まるほど、その効果はより向上する。
このため、買収防衛策は、消却条件の客観性の度合いに応じて、社外者あるいは独立社外者の関与の度合いを高める工夫が必要となる。特に、客観的な消却条項を設けない場合には、原則として、取締役会の恣意的判断を排除するために、独立社外者の判断を重視する仕組みが必要となる。」
(13頁)

と述べた上で、

「独立性とは、買収防衛策の是非をチェックする社外取締役と社外監査役が、内部取締役の保身行動を厳しく監視できる実態を兼ね備えるために要求される概念であり、会社からの実質的な独立性が要請される。買収防衛策を監視する「独立社外者」として適正か否かについては、その実態を慎重に精査し、防衛策の内容に応じて、株主の納得と理解が得られるものでなければならない。また、独立社外取締役や独立社外監査役の割合が少ない場合には、その数を増やす努力や、独立社外取締役や独立社外監査役から構成される企業統治委員会を組織し、有事においては、買収防衛策の発動について、この委員会が取締役会に勧告するといった工夫が必要となる。」

としています。すなわち、「意思決定の中立性」が大事であるとの理解の下で独立社外者の関与ないし独立第三者委員会の設置を要求し、ただ、独立性の有無や程度については、「会社からの実質的な独立性が要請される」として、アメリカ同様、実質的判断によってケース・バイ・ケースに確定していこうとする基本姿勢を示しています。

2. MBOにおける独立取締役

続いて、MBOに関しては、企業価値研究会による平成19年8月2日付け<「報告書」>と、経産省による平成19年9月4日付け<「指針」>が存在しますが、内容はほぼ同じですので、「指針」(14頁)から関連箇所(「意思決定過程における恣意性の排除」)を抜粋しますと、

【意思決定において、不当に恣意的な判断がなされないように、意思決定のプロセスにおける工夫を行うことが考えられる。例えば、以下のような対応例が考えられ、実際の案件に応じてこれらの対応を組み合わせる等して、意思決定のプロセスを工夫することが考えられる。

(社外役員が存在する場合には)当該役員、又は独立した第三者委員会等に対するMBO の是非及び条件についての諮問(又はこれらの者によるMBO を行う取締役との交渉)、及びその結果なされた判断の尊重
② 取締役及び監査役全員の承認(特別の利害関係を有する取締役を除く)
③ 意思決定方法に関し、弁護士・アドバイザー等による独立したアドバイスを取得すること及びその名称を明らかにすること
④ MBO において提示されている価格に関し、対象会社において、独立した第三者評価機関からの算定書等を取得すること】


とされており、「独立性」要件については、

「端的には、構造的な利益相反状態にあることによる不透明感を払拭するだけの、実質的に独立した監督能力・アドバイス能力等を備えている必要がある。かかる観点から、社外役員や第三者委員会の委員が有する会社との利害関係については十分に精査される必要があり、「独立性」の内容についても、対象会社から株主に対して十分な説明がなされる必要がある。」

と述べられています。よって、ここでも、独立性の要件は具体的に定められておらず、①経営陣から実質的に独立していること、②それを会社が十分説明すること、の2点が挙げられているに留まります。

このように、日本においては、「独立性」の要件を明確化しようという動きが一部あるものの(*2)、具体的な基準が定立される段階には至っておらず、裁判例も乏しいため(独立委員会が絡んだ裁判はありますが、「独立性」が正面から論点になっていない)、参考にできる前例が存在しない状態にあります。

しかし、具体的要件が提示されていないとしても、経産省・法務省が「独立取締役」「特別委員会(*1)」の利用を推奨しているわけですから、日本で近年流行している事前警告型買収防衛策においては特別委員会の利用が当たり前のような雰囲気になっています(*3)。独立委員会の構成、効用、アメリカとの比較などについては、次回のコラムで述べたいと思います。

(*1) 名称としては、「特別委員会」のほかにも、「独立委員会」「第三者委員会」「企業価値評価委員会」などが利用されています。
(*2)  山田剛志「「独立取締役」が企業経営に果たす役割」(ビジネス法務2005.7、53頁)など。
(*3) 例として、TBSは楽天からの買収提案に関して、企業価値評価特別委員会に防衛策発動の是非に関する勧告を諮問しました。また、北越製紙は王子製紙からの買収提案に関し独立委員会を招集した結果、防衛策発動勧告が発せられました。

独立取締役/特別委員会に関する議論について(その2)

前回に引き続き、NYSEの上場会社マニュアルが定める取締役の「独立性」基準について紹介したいと思います。なお、米国では、エンロン社の破綻後にSOX法が定められ、証券取引所が上場企業に対して独立取締役の過半数採用を義務化したため、現在、大企業においては、かかる独立取締役が取締役の約8割を占めていると言われています。この点からも、米国のコーポレート弁護士が頻繁に参照しているNYSEのマニュアル基準を知っておくことは有用だと考えます。

マニュアルの303A.02 Independence Tests(独立性テスト)は、総論として、

(a) No director qualifies as "independent" unless the board of directors affirmatively determines that the director has no material relationship with the listed company (either directly or as a partner, shareholder or officer of an organization that has a relationship with the company). Companies must identify which directors are independent and disclose the basis for that determination.
((a) 取締役は、当該取締役が上場会社と重要な関係(*1)を(直接に、または当該企業と関係を有する組織のパートナー、株主もしくは業務執行者として)有していないことが取締役会によって判断されない限り、「独立」しているということはできない。会社は、取締役のうちの誰が独立取締役であるかを特定し、その判断の根拠を公表しなければならない。)

と定めた上で、(b)項以下で、以下の取締役は独立性を有しないと定めています(英文は省略します)。

(i) 現在もしくは過去3年間の間に当該上場会社(*2)の従業員であった者、または近親者(*3)が現在もしくは過去3年間の間に当該上場会社の業務執行者(executive officer) であった者
(ii) 当該取締役または近親者が、過去3年間におけるある12ヶ月の期間内に、取締役または委員会のメンバーとしての報酬および年金その他の形式の従前の業務遂行に対する対価としての繰延給与 (但し、かかる報酬は、継続的な業務を提供することを条件としたものであってはならない) を除いて、10万ドル超の報酬を当該上場会社から受け取っている者
(iii)
(A) 当該取締役またはその近親者が、当該上場会社の内部監査人または外部監査人である事務所のパートナーである者
(B) かかる事務所の従業員である取締役
(C) かかる事務所の従業員であって、かかる事務所の監査業務、保証業務または税務コンプライアンス業務(タックスプラニングを除く)に従事している近親者を有する取締役
(D) 当該取締役またはその近親者が(現在はパートナー又は従業員ではない場合であっても)、過去3年間の間に、当該事務所のパートナーまたは従業員であり、その時に当該上場会社に関する業務に直接従事していた者
(iV) 当該取締役またはその近親者が、現在もしくは過去3年間の間に、当該上場会社の現在の業務執行者がその期間に報酬委員会に所属していたことがある会社において、業務執行者として雇用されている者もしくは雇用されていた者
(v) 過去3年間の会計年度の間に、100万ドルもしくはその会社の連結総収入の2%を超える額について、当該上場会社に対して資産またはサービスに対する支払を行い、または当該上場会社から支払を受けている会社の現在の従業員である取締役、または近親者がかかる会社の現在の業務執行者である者


細部を省略して概要をまとめると、

① 現在および過去3年間、会社との雇用関係がないこと、
② 現在および過去3年間、本人または家族が会社から10万ドル以上の報酬を受け取っていないこと、
③ 本人および家族が会社の監査関係者ではないこと、
④ 会社の売上の2%または100万ドル以上の大口取引先の従業員ではないこと、


がNYSEが定める独立取締役の要件ということになります。これについて、企業価値研究会は、「基本的には、取引関係者、外部アドバイザー、親族関係者は独立とみなされない点で日本の社外の概念より厳しいが、過去に会社と雇用関係にあった者のうち、離職後3年経っていて金銭的関係がない者の場合は独立の概念に合致するとされている点は日本の社外の概念よりも広い」と述べています(<平成17年5月27日付け企業価値報告書>94頁)。

さて、そうすると日本における「社外取締役」の意義が問題となりますが、日本では、会社法によって「社外取締役」という類型が設けられています(*4)。
会作法373条1項2号によると、社外取締役になるためには、

① 現在、その会社または子会社の業務執行取締役・執行役・使用人でなく、かつ、
② 過去に、その会社または子会社の業務執行取締役・執行役・使用人となったことがないこと

が必要です。

このように日米の「独立取締役」「社外取締役」の定義を並べると、確かに、企業価値研究会が述べているような比較検討ができるようにも見えます。しかし、そもそも日本の会社法が定める「社外」性と、アメリカで発達した「独立」性の概念は重なる部分はありますが、同じものではありません。後者は前者よりもかなり実質的な判断を要求する基準です。
また、歴史的経緯を見ると、日本は、アメリカ型コーポレート・ガバナンス体制への移行を求めるアメリカから、NYSEレベルの独立性基準を採用するよう強く求められてきたわけですが(*5)、私見では、日本では未だ独立取締役市場が充実しておらず、会社と利害関係を有しないいわば部外者が会社に入ってくることを好まない風土も残っているため(これは、「株主利益の最大化は、経営陣を有効に監視できる外部の第三者でなければ実現できない」と考える近年のアメリカ型発想が根付いていないことによると思われます。)、アメリカほどの詳細で厳格な独立性基準を導入するに至っておらず、とりあえず形式的な社外性基準を置いて実務での議論の進展を待っている状況にあるのではないかと考えます。

実際に、東京証券取引所が「有価証券上場規程」等の一部改正を行った平成17年末に、「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」に独立取締役(監査役)に関する報告事項を盛り込むかどうかを巡って、以下のようなやりとりがありました(<パブリック・コメント>における議論)。

パブリック・コメント
「独立取締役(監査役)」という新たな概念を盛り込むことには反対であり、これについては社外取締役・社外監査役に関する従来の開示等で充分である。」
「現在、独立性についての概念は曖昧であり、コンセンサスが得られているわけでない。議論が未成熟なまま、「独立」か否かについて、各社が主観的に判断・開示することになれば、むしろ、投資家の混乱を招くおそれや投資家をミスリードする可能性がある。まずは、実証分析を行った上で、開示の必要性の有無について検討すべきであり、一律に記載を強制するのは、時期尚早である。各社の自主的な判断に応じて、「社外の人材の活用」について自由に記載できる仕組みとし、「独立取締役」等の定義付けが困難な項目は削除すべきである。」

東証の回答
「企業不祥事の防止などに当たっては、一般の株主の利益を代表する独立した社外の人材による経営に対するチェックが、ガバナンス上有効に機能することが期待できるため、我が国における経営の外部チェックを担う社外取締役・社外監査役のいずれについても、一定の独立性があることが有用であると考えます。
一方で、ご指摘のとおり、独立性については各方面で多様な議論がなされている最中であることから、今回は、形式的な定義を定めることは考えておりませんが、投資家の関心も高いと考えられることから、従来開示していただいている社外取締役・社外監査役と当該会社との関係に加え、当該関係の人材を採用している理由等を説明していただく中で、各社が実際にその社外性を十分に活用しているか、独立性についてどのように認識しているのかについて明らかにしていただくこととします。これにより、企業経営の実態と有機した形で独立性についての議論が一層深まるものと考えられますし、経営者自身にあらためて自社の経営監視機能について熟慮していただく契機になるものと考えます。」

上記の議論を見ると、東証が用いている「一般の株主の利益を代表する独立した社外の人材による経営に対するチェック」というのはまさにアメリカ型コーポレート・ガバナンス体制を意味しており、これに対して産業界の一部からは反対または躊躇する意見が出ていることが分かります。日本では、会社法において「社外」の概念を定めているに過ぎず、独立取締役に関する議論も始まったばかりですので、現在の混沌とした状況は当然と感じます。

アメリカでも実は1950年頃には独立取締役は全体の20%を占めているに過ぎませんでした。それが2005年には75%まで増加したわけですが、さて、日本はアメリカがこの50年間に歩んできた道を同じように歩むのか・・・もし歩むのであれば、アメリカでこの50年間に発生した多くのトラブルやそれを解決するために編み出された工夫についても学ばなければならないでしょう。

いずれにしても、この独立取締役の問題は、コーポレート・ガバナンスを考えるに当たって極めて重要なテーマですので、次回のコラムで更に詳細に検討してみたいと思います。


(*1)取締役と上場会社の関係の重要性を評価する際には、当該取締役が関係を有している個人又は組織からの独立性についてもチェックされます。ここでいう「重要な関係」とは、商業、産業、銀行、コンサルティング、法律、会計、慈善、親族その他の関係を含みうるとされていますが、株式保有は、独立性の障害とは見なさないとされています。また、取締役の独立性について、会社は毎年の委任状説明書(proxy statement)または年次報告書(10-K)に明記しなければなりません。
(*2) 「会社」とは、当該会社の属する連結集団における全ての親会社および子会社を含みます。
(*3) 「近親者」とは、当該人の配偶者、親、子、兄弟姉妹、法律上の父・母、法律上の息子・娘及び法律上の兄弟姉妹、並びにかかる人と住居を同じくしている全ての人 (家事奉公人を除く) を含みます。
(*4) 社外取締役は、会社に対する責任について通常の取締役とは異なる扱いを受け(会社法427条1項)、また、取締役設置会社において、取締役会が会社法362条4項1号・2号に掲げる事項の決定を特別取締役(373条)の決議に委ねるためには、社外取締役を選任しなければなりません。なお、取締役の数が6人以上でうち1人以上が社外取締役である株式会社においては、本来取締役会の決議事項とされる、重要財産の処分及び譲り受けと多額の借財(362条4項1号2号)について、あらかじめ選定した3名以上の取締役の過半数の賛成で決議することができますが、この選定された取締役のことを特別取締役といいます。
(*5) http://japan.usembassy.gov/j/p/tpj-j098.html

独立取締役/特別委員会に関する議論について(その1)

今回からしばらく、米国では第4期M&Aブームが発生した1980年代から問題となり、日本でもここ数年注目を集め始めた「独立取締役」の意義や効果に焦点を当てて、買収防衛策導入やMBOの場面でよく耳にするようになった「特別委員会」に関する昨今の議論も含めて、日米の状況を整理していきたいと思います。

まずは、1985年の有名なUnocal判決(*1)についておさらいをします。
石油大手のUnocal社を、1回目は現金、2回目はジャンクボンドで支払うとする二段階強圧的TOBによって買収しようとしたMesa社が、Unocal社が採った防衛策(Mesa社を除く全株主を対象とする自社株のTOB)の適法性を争い、その差止めを求めたこの事件において、デラウエア州の最高裁判所(*2)は、買収防衛策を導入する場合には、取締役会が会社や株主の利益よりも自己の利益のために行動するおそれがあるため、取締役会の判断を尊重するBusiness Judgment Ruleではなく、より厳しい基準(Enhanced Scrutiny Testと呼ばれ、立証責任を取締役側が負う。)が妥当すると述べた上で(*3)、

① 会社の政策や効率性に対する脅威が迫っていると信じる合理的な根拠があり(*4)、
② 採られた防衛策が生じた脅威との関係で合理的であったこと(*5)

を取締役が立証することを要求し、更に、①については、「利害関係のない独立した取締役が多数を占める取締役会が承認した事実があれば、立証が相当程度強化される」と述べました(本件ではUnocal社が勝訴しましたが、同社の取締役会のメンバー14名のうち8名が独立社外取締役であったこともこの結論に影響を与えたと考えます。)。すなわち、「会社の経営方針や効率性に対する脅威」が迫っているかどうかを取締役が判断するに当たっては、取締役は合理的な調査を行い、誠実に(in good faith)検討しなければなりません。その場面で、自己の利益を重視して、当該提案は会社にとって脅威だと主張することは許されないわけです。しかし、取締役が自己の利益を重視したのか、会社や株主の利益を重視したのかは主観による部分が大きく、外から見て判断することは困難です。そこで、「利害関係のない独立した取締役が多数を占める取締役会」が判断した場合には、類型的に、「会社の経営方針や効率性に対する脅威」の存在が客観的に判断された可能性が高いと言うことによって、取締役の恣意的判断を減らそうとしたものだと考えられます。このように、米国ではプロセスの慎重性・中立性が既に20年以上前から重視されており、このUnocal判決によって、独立取締役を多数選任しようとする動きが活発化しました。

また、<ALI>(The American Law Institute、米国法律協会)は、有事の買収防衛策発動を認める条件として、上記ユノカル基準同様、「防衛策がTOBに対する合理的対応でなければならない」としていますが、前提として、「利害関係のない独立した取締役が構成する特別委員会」が防衛策の内容を決定しなければならないとしています。

さて、総論の次は、いかなる者であれば「独立取締役」といえるかが問題です。この点、アメリカでは、SOX法(サーベンス・オクスリー法: Sarbanes-Oxley Act of 2002)、SEC規則、NYSE規則、NASDAQ規則などにおいて独立性の概念が規定されています。例えば、<NYSE(ニューヨーク証券取引所)のウェブサイト>へ行き、”NYSE Regulation”⇒”Listed Companies”⇒”Listed Company Manual”と進みますと、NYSEの<上場会社規則>に到達できます。ここのSection 303A(Corporate Governance Standards)に独立取締役の定義や判断基準が書かれてあります。最初の303A.01には、

Listed companies must have a majority of independent directors.

とあり、上場企業の取締役の過半数は独立取締役(independent directors)でなければならないと定めています。
303A.02以降は、独立性の判断基準ですが、ここは少し長くなりますので、次回のコラムで述べたいと思います。


(*1) Unocal v. Mesa Petroleum Co., 493 A.2d. 946 (Del. 1985))、日本語による解説としては、「M&A判例の分析と展開」(経済法令研究会)246頁など。
(*2) 米国においては、公開企業の50%以上、Fortune500企業の約60%がデラウエア州で設立されており、裁判の数も多いため、会社法やM&Aの論点に関するデラウエア州裁判所の判断は、米国での実務に多大な影響を与えています。
(*3) Unocal判決が出るまでは、防衛策の適法性判断にはBusiness Judgment Ruleが用いられていました。
(*4) Reasonableness Test: Satisfied by demonstration that the board of directors had reasonable grounds for believing that a danger or threat to corporate policy and effectiveness existed
(*5) Proportionality Test: Satisfied by a demonstration that the board of directors’ defensive response was reasonable and proportional in relation to the threat posed

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