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井垣太介 (Taisuke Igaki)

Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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三角組織再編の手続と留意点(その3)

三角組織再編の手続と留意点に関して、その他の細かい点を拾っておきたいと思います。

まず、親会社株式を三角組織再編行為の対価として交付する際に注意すべき点があります。三角株式交換の場合、A社が完全親会社、T社が完全子会社となり、T社の株主にはA社の親会社であるP社の株式が交付されるわけですが、T社が自己株式を保有していると、T社自身にP社の株式が割り当てられることになります。会社法上はそれで問題ありませんが、税法上は、このケースにおけるP社株式の帳簿価額はゼロ円となってしまい、将来の売却時点で課税関係が発生することになります。よって、三角株式交換を利用する場合は、株式交換実行前にT社が有するT社の自己株式を消却しておく必要があります。なお、合併の場合は、合併の対価が存続会社や消滅会社自身に割り当てられることはないため(会社法749条1項3号)、かかる心配は要りません。

続いて、三角組織再編行為の対価として交付される親会社株式は、日本の金融商品取引所に上場されている必要があるのでしょうか?
・・・この点、会社法は、組織再編の対価として交付する株式が日本の上場株式でなければならないとは定めていません。ところが、仮に日本での非上場株式を株主に交付するとなると、まず、どうやって外国会社の株券を日本の株主に交付するかという点から問題となります。郵送で突然英語の株券が送られてきても、株主はそれをどうやって売却すれば良いのか分からないでしょうし、株券を送りつけた外国の親会社自身も株主名簿に漢字で株主の名前を書いて登録し、その後も確実に管理していくというのは容易でありません。外国親会社が利用している当該外国の株主名簿管理人以外に日本にも株主名簿管理人を置いて、両管理人間で適切に情報伝達をしてもらうといった方法は考えられますが、株券の交付、株主の把握の問題以外にも、配当金を日本円で支払うにはどうすればよいかとか、株主総会招集通知などの書類を日本語で作成して株主に交付するにはどうすればよいかといった問題がたくさん出てきます。保振(証券保管振替機構)も、タンス株券については管理やサービスのしようがありませんので、外国親会社が日本で上場していないと消滅会社の株主にはかなりの不便を掛けてしまうおそれがあります。実務的には株式事務代行機関を通じてディールごとにアレンジすることになると思われますが、できれば、交付される親会社株式については、日本の金融商品取引所に上場されているのが望ましいと言えるでしょう。この点、日興コーディアルとシティグループの株式交換で、米シティが株式交換の効力発生前(2007年11月5日付け)に東京証券取引所に上場したのは、上記のような不便を日興コーディアルの株主に掛けない(ひいては、株主総会での承認を得る)ためと考えられます。

では、最後に、日本の会社が海外で三角合併を行うことはできるのでしょうか?
・・・この点については、海外の法規制とは別に、自己株式取得を規制する日本の旧商法との関係で、対価として交付するための親会社株式を子会社が取得すること自体が認められないのではないかという見解が有力でした。事実、1990年に京セラが米国で行なった三角合併についても適法だったと言えるのかという議論がなされ、これに続く実例は現れませんでした。しかし、新しい会社法では、消滅会社の株主等に対して親会社株式を交付するのに必要な限度での親会社株式の取得を認めていますので(会社法135条2項5号、同施行規則23条8号)、日本企業が海外で三角合併を行うために、海外に子会社を設立し、その子会社に日本の親会社の株式を取得させることができるようになりました。
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三角組織再編の手続と留意点(その2)

三角組織再編を行なうためには、対価として交付する親会社株式を存続会社(株式交換では完全親会社となる会社、会社分割では分割会社)が事前に取得している必要があります(*1)。

この点、日本の会社法は、原則として、子会社が親会社の株式を取得することを認めておらず、親会社株式を取得した場合には相当の時期に処分しなければならないと定めているのですが(会社法135条)、これでは三角組織再編ができなくなってしまいますので、三角組織再編に必要な範囲に限って親会社株式を取得し保有することを認めています(会社法800条1項、2項)

さて、問題は、子会社が事前にどのような方法で親会社株式を取得するかですが(既にたまたま親会社株式を保有していた場合を除く)、この点については、

① 市場において親会社株式を取得する
② 市場外で、第三者から親会社株式を取得する
③ 親会社から新株の発行を受ける
④ 親会社が自己株式や新株を子会社に対して現物出資する


といった方法が考えられます。順に検討しますと、

①については、市場内で大量の買い注文を行なえば株価が高騰して親会社の株を取得するための資金が膨れ上がってしまいますし、そもそも必要数買い切れる保証はありませんので、実務上は採りにくいであろうと思います。

②については、相対取引になりますので、やはり必要数を買い揃えられるかという問題があるほか、買付数によっては親会社株式に対する公開買付け義務が発生するという問題もあり、ケースによってはあまり現実的ではありません。

③については、子会社が親会社の新株に対して払い込む資金をどうやって獲得するかが次の問題となります。通常は、親会社からの借入れや親会社に対する新株発行による資本金の注入が考えられますが、この点については、元々親会社の資金だったお金で親会社の増資の原資に充てることが資本空洞化につながり、仮装払い込み(見せ金)と評価されるリスクがあります(*2)(見せ金となれば、公正証書原本不実記載・行使罪(刑法157条)が成立するおそれあり)。しかし、親会社からの貸付金や出資金によって親会社株式を取得することができないとなると、三角組織再編のために子会社による親会社株式の取得を認めたこととの整合性にクエスチョン・マークがつきます。個人的には、親会社サイドで現実のキャッシュ増加がなくとも、三角組織再編のための親会社株式取得のためであれば認めてよいのではないかと考えています。

④については、若干細かくかつ理論的な話になってしまうのですが、そもそも現物出資においては、「出資財産の給付」が先で、それがあって初めて「その日に引受人から株主になれる」という法律上の順序があるところ(会社法209条)、上記例では、まず、親会社が自社株を財産として保有しており、それを子会社に給付することで株主となって子会社から親会社に子会社の株式が発行されるという順番にならなければなりません。しかし、親会社と子会社が相互に新株発行または自己株式の交付を行い払込義務を合意相殺するような形では、そもそも「親会社が自社株を財産として保有している瞬間」が存在しないため、理論的にお互い新株発行ができないのではないかという疑問が生まれます(*3)。この点は、親会社が既に保有している自己株式を子会社に給付するケースであればクリアできるようにも見えますが、自己株式の処分の効果が、子会社から親会社に対する新株発行に順序的に先立っていると言えるのかどうかも日本の会社法上実は明確ではありません。よって、この点は、立法的に解決されるべき部分ではないかと考えます。

その他、実務では、親会社株式の取得方法としていろいろな手法が提案・指摘されているところではありますが、今のところ、親会社からの借入金または出資金で親会社株式を取得する方法か、親会社が保有している自己株式を現物出資として受け取る方法が現実的ではないかと考えています。なお、この際には、もちろん親会社の準拠法を確認することも重要になってきます。


(*1) アメリカでは、親会社から消滅会社等の株主に親会社株式を直接交付できるのですが、日本ではそれは認められていません。よって、最初に、将来の三角組織再編に備えて親会社株式を取得しておくというプロセスが必要になってきます。
(*2) 子会社側に返済能力と返済予定がある場合には親会社の子会社に対する貸付債権は実質的なものであり、仮装払い込みには該当しないとする学説もあります。また、当該三角組織再編における親会社が外国企業であれば、その外国の法規制をチェックしなければなりません。
(*3) 払込義務の合意相殺については、そもそも登記通達上許されていないとして、相互に現物出資として新株を発行する方法を否定する見解も存在します。

三角組織再編の手続と留意点(その1)

早いもので、2007年5月1日付けで三角組織再編が解禁されてから1年以上が経過しました。また、株式会社日興コーディアルグループは、2008年1月29日を効力発生日として、米国の金融大手であるシティグループ・インクの普通株式を対価とし、日興コーディアルを、米シティの100%子会社である日本法人シティグループ・ジャパン・ホールディングス株式会社の完全子会社とする株式交換を実施しましたが、これは日本初の三角株式交換でした。

本ブログでは、三角組織再編については、これまでに<合併の税務(その6)~三角合併の場合~><合併の税務(その7)~逆三角合併の場合~>において三角合併の税務を紹介しましたが、今回から数回のシリーズで、三角組織再編に関する他の論点についても整理しておきたいと思います。

三角組織再編とは、組織再編行為の結果消滅する会社(株式交換では完全子会社となる会社、会社分割では承継会社)の株主に、「存続会社の株式」ではなく「存続会社の親会社の株式」を交付する組織再編スキームです。以下では、存続会社をA社、対象会社(消滅会社)をT社、A社の完全親会社をP社として説明していきたいと思います。例えば、単純にA社とT社が合併すれば、T社の株主にはA社株式が与えられますので、P社は(T社と合併した後の)A社を100%支配することは出来ません。その後、A社を完全子会社としたければ、A社の少数株主にP社の株式を交付する株式交換を実施しなければならないでしょう。ところが、三角合併を用いれば、最初から、T社の株主にP社の株式を交付出来ますので、三角合併終了時点で、(T社と合併した後の)A社はP社の完全子会社となっています。すなわち、100%の資本関係を維持しながら、一回の取引コストで子会社を他の会社と合併させられる点に、三角合併の特徴があると言えます(株式交換、会社分割においても、三角方式を利用しなければA社には少数株主が発生してしまいます)。

そもそも100%子会社にするメリットは、少数株主を排除して親会社による自由な経営を行えるとか、意思決定のスピードを上げられる点にあると言われます。また、少数株主への配当を行なわずに済むのであれば、グループ内の経営資源が外部に流出する事態を避けられますし、親会社への配当をあまり行なわず内部留保を増やした上で成長投資に当てるとか、逆に親会社への配当を増やした上で成長余地の大きい他の系列子会社に貸し付けてグループ全体の利益を増やす資金再分配などが容易になります。そこで、これらのメリットを享受したいのであれば、少数株主の締め出し(スクイーズ・アウト)を行なう必要がありますが、そのためには三角組織再編が便利ということになります。とりわけ外国会社にとっては、税制適格要件を充たした三角組織再編を行なうというのが、実際上採り得る数少ないスクイーズ・アウト手法の一つになってきます。

ただ、他方で、親会社の株式を交付することによるリスクも考慮する必要があります。設例で、P社の株式をT社の株主に交付すれば、P社株式において「株式価値の希薄化」が発生します。T社の元株主が三角合併によって交付を受けたP社株式を一斉に市場で売りに出せば、P社の株価は下がってしまいます。また、T社を子会社として取り込んでしまうことで、P社の連結決算に影響を与えますので、業績の悪い会社を吸収する際には注意が必要です。三角合併は子会社の合併ですので、親会社レベルでの株主総会承認は不要であるケースがほとんどだと思いますが、その場合であっても、親会社の取締役は常にその株主から責任を追及される立場にありますので、自社のバランスシートを傷めたり、株価の下落を引き起こすような三角合併については、そう簡単には踏み込めないと言えるでしょう。

さて、実際に三角組織再編を行なう手順ですが、T社が上場会社の場合、合併や株式交換を行うために必要な株主総会の特別決議(議決権ベースで過半数が出席し、その3分の2以上の賛成が必要)を得やすくするために、第一段階としてキャッシュを対価とする公開買付けを行い、第二段階として三角合併や三角株式交換を行なうのが通常ではないかと思います。第二段階の選択肢としては、キャッシュを対価として全部取得条項付種類株式を強制取得する方法もありえますが、この場合に発生する可能性がある取締役の責任(会社法464条1項)などを考慮して、三角組織再編を利用する方法が好まれているようです。

では、第二段階のスクイーズ・アウトの手法を更に細かく見た場合には、三角合併と三角株式交換のいずれが良いのでしょうか?・・・すぐに思いつくのは、三角株式交換であれば対象会社は法人としては残り続けるので(設例であれば、T社はA社の完全子会社になるものの法人としては存続する)、対象会社が有する業務上必要な許認可の再取得や、資産の移転手続などが不要であるのに対し、三角合併であれば対象会社は消滅しますので、許認可の取り直しや資産移転手続(必要に応じて登録・登記なども)が発生してしまうという違いです。また、これ以外に、三角組織再編が税制適格要件を充たさない場合、それが株式交換であれば株主に対するみなし配当課税(*1)は発生しないが、合併であればみなし配当課税が発生するため、株式交換の方が望ましいという意見もあります(*2)。

次回のコラムでは、引き続き三角組織再編に関する手続や論点について紹介していきます。


(*1) 合併における解散法人に留保利益があった場合、課税なくして合併が認められると、株主に対する配当課税のチャンスが失われてしまうため、消滅会社の利益を原資とする部分(利益積立金)が存続会社の資本金および資本積立金に組み入れられる場合、法人税法では、その資本組入部分について、「一旦株主に配当として分配し、その分配部分を再び株主から出資を受けた」ものとみなします。この株主への配当とみなされる部分(別の言い方をすれば、「株主が交付を受けた財産の時価合計額から消滅会社の資本金および資本積立金の額を控除した残額」)について行われる課税が、「みなし配当課税」です。みなし配当が発生する場合、合併法人は一株当たりのみなし配当額を株主に通知する義務があります。
(*2) 石綿学「三角組織再編をめぐる実務上の諸問題」(商事法務1832号44頁)

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