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Author:井垣太介 (Taisuke Igaki)
日本及び米国NY州弁護士
 @西村あさひ法律事務所

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表明保証条項(その2)~契約締結権限及び契約の有効性/財務諸表~

1 契約締結権限及び契約の有効性
【英語】Authority and Validity. Seller has the corporate power, right and authority to execute and deliver this Agreement and the Transaction Documents and to perform its obligations under this Agreement and the Transaction Documents. Seller does not need to give any notice to, make any filing with, or obtain any authorization, consent, or approval of any Person, including, without limitation, any government or governmental agency, in order to consummate the transactions contemplated by this Agreement. This Agreement and each of the Transaction Documents constitutes the legal, valid, and binding obligation of Seller, enforceable in accordance with its terms.
【日本語】売主は,本契約及び取引関連契約を締結・交付し,契約上の義務を履行する権限を有している。売主は,本契約意によって企図されている取引を完了するために,政府機関を含めいかなる者に対しても,通知,申請,許認可・承認の取得を行う必要がない。本契約及び個々の取引関連契約は,その文言に従って強制執行可能な,法的に有効で拘束力のある売主の義務を構成する。
【注意点】上記において,”deliver”という言葉が入っているのは,英米法特有の考え方に基づきます。すなわち,大陸法では,意思の合致=「申込み(offer)と承諾(acceptance)」があれば契約は成立し,契約(contract)と合意(agreement)の間に差異はなく,いずれも裁判を通して強制執行が可能となりますが,英米法においては,契約(contract)と合意(agreement)の効果が異なり,「契約(contract)とは,法律上強制可能な合意(agreement)」と定義付けられます。そして,法的拘束力がある(enforceable)契約とするためには,原則として,意思の合致に加えて,契約の相手方に提供する対価を意味する約因(consideration)が必要ですが,例外的に,捺印証書(deed)による場合は,約因がなくとも強制執行可能とされます。この捺印証書は,①書面,②捺印,③交付の3要件を充たす場合に有効性が認められるところ,約因がなかったと認定された場合にも契約の有効性を守るべく,③交付(”deliver”)というプロセスが重要視され,その結果,表明保証条項にも意図的に交付(”deliver”)という言葉が入ってくるのです。ちなみに,②捺印とは,正式には,いわゆるsealing waxを溶かして行う刻印ですが,最近では省略されることが多く,アメリカでは,②の要件を廃止した州もあります。

2 財務諸表
【英語】Financial Statements. Schedule ● attached hereto consists of certain balance sheets, profit and loss statements and other financial statements of the Seller’s Business delivered to Buyer prior to the Closing, including, without limitation those that set forth the Seller’s financial condition with respect to its business operations relating to the Acquired Assets as of December 31, 2007, December 31, 2008 and March 31, 2009 (all of the foregoing being collectively referred to hereinafter as the “Financial Statements”). All Financial Statements were prepared in conformity with generally accepted accounting principles, applied on a consistent basis throughout the periods covered thereby, and are accurate and present fairly the financial position of the Seller’s Business at the dates thereof and the results of operations of the Seller’s Business for the periods indicated. Since the December 31, 2008 Financial Statements, there has been no Material Adverse Change relating to Seller.
【日本語】別紙●は,クロージングまでに買主に交付された売主の事業に関する貸借対照表,損益計算書その他の財務諸表の一覧であり,2007年12月31日,2008年12月31日及び2009年3月31日付けの譲渡対象資産に関連する事業に関する売主の財務状態を示すものを含む(以下,総称して「本件財務諸表」という。)。全ての本件財務諸表は,上記期間に継続して適用されるGAAPに従って作成されており,正確で,各期日における売主の事業の経済的な状態及び該当期間における売主の事業の実績を正しく表現している。2008年12月31日付け財務諸表作成以降は,売主に関して重大な悪化は発生していない。
【注意点】財務諸表が特定の日時点の財務状態を表すものとして作成される関係で,買主から見れば,その特定の日以降にMACが発生していないことを表明保証してもらう必要があります。財務諸表の表明保証に関して実務上紛争につながりうるものとして,例えば,預り金債務の金額が挙げられます。事業運営に関連して,使い終わったら返してもらう前提で何かをユーザーに貸す場合があります。その場合,売主の貸借対照表には,負債として預り金債務が計上されているわけですが,何らかの事情で,事業承継後に預り金返還債務が予想以上に存在したことが判明するケースがあります。この場合,財務諸表の真実性・正確性に関する表明保証条項を根拠に買主は売主に対して補償を請求するでしょう。これに対して,売主はどう対抗・反論できるでしょうか。この問題については,機会を改めて説明したいと思います。
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表明保証条項(その1)~柱書/会社の有効な存在,事業の運営,株式所有等~

今回からシリーズで,表明保証条項の具体例を英語・日本語併記方式で見て行きたいと思います。表明保証条項(REPRESENTATIONS AND WARRANTIES)は,日本で使われているM&Aの契約書にも入っていますが,やはりアメリカで使用されている契約書の方が詳細で入念なものになっていますので,最近扱った案件(アメリカ企業の買収案件で,スキームは株式譲渡)で使用した契約書を用いながら解説していきたいと思います。なお,日本語訳は,分かり易さを優先して完全な逐語訳は行っていません。

1 柱書
【英語】Seller and Shareholders jointly and severally make the following representations and warranties to Buyer, its successors and assigns. Buyer shall be entitled to rely upon the representations, warranties and covenants of Seller and any Shareholder notwithstanding any investigation conducted before or after the Closing, and notwithstanding any knowledge or notice of any fact or circumstance which Buyer may have as the result of such investigation or otherwise.
【日本語】売主と株主は,買主,その承継者及び譲受人に対して,以下の事項について連帯して表明保証する。買主は,クロージングの前または後に行った調査,その調査等の結果として買主が知るに至った事実や状況に拘らず,当該表明保証に依拠しなければならない。
【注意点】「連帯して」責任を負わせられるかどうかは,表明保証する内容と,売主・買主の交渉力によって変わってきます。個々の株主に関する事項についてまで連帯責任とすることは難しいでしょう。後半の文章については,日本の契約書では入っていないこともあると思いますが,「言った,言わない」の争いが後日発生しないようにするためには,契約書に書かれていないことは表明保証していないと明記する当該条項は有益だと考えます。

2 会社の有効な存在,事業の運営,株式所有等
【英語】Corporate Status, Records and Ownership of Seller.    Seller is now and on the Closing Date will be a New York corporation duly organized, validly existing and in good standing under the laws of the State of New York. Seller has all requisite corporate power and authority to own, operate and/or lease the Acquired Assets, as the case may be, and to carry on its business as it is now being conducted. Seller is now and on the Closing Date will be qualified to do business as a foreign corporation and is in good standing in each jurisdiction where the Seller’s operations, activities or assets require such qualification, except where the failure to so qualify or be in good standing would not have a Material Adverse Effect upon the Seller’s Business or the Acquired Assets. Shareholders are collectively the sole direct and indirect owners of the capital stock of Seller. Seller has no subsidiaries or Affiliated entities and does not own or otherwise control, directly or indirectly, any interest, option or other right to acquire any interest in any Person.
【日本語】売主は,現在及びクロージング日において,ニューヨーク州法に基づき適法に設立され有効に存続するニューヨーク州法人である。売主は,譲渡資産を所有・運用・賃貸し,現在行っている事業を運営するために必要な全ての権利・権限を有している。売主は,現在及びクロージング日において,売主の事業運営・活動・資産との関係で必要とされる外国における事業運営資格を保有している。ただし,当該事業運営資格の有無が売主の事業又は譲渡資産に重大な悪影響を与えない場合はこの限りでない。本件株主は,売主の全株式を直接又は間接に所有している。売主は,子会社・関連会社を有しておらず,他のいかなる者に対する直接又は間接の持分や持分購入オプション等を有していない。
【注意点】売主が事業の海外展開を行っている場合,念のために,海外で事業を行うために必要な手続等を履践していることを確認しておいた方がいいでしょう。MAE(重大な悪影響)についてはすっかりお馴染みとなりましたが,何をもって「重大な悪影響」と評価すべきかについては後日争いになる可能性があります。争いになってもいいから,とにかく話し合いの機会を持つためにMAEやMAC条項を入れるというのが発想の根底にありますので,曖昧な条項ではありますが,入れておいてもよいと思います。

表明保証条項を巡る紛争(日本のケース)(その2)

続いて、昨年判決が出たライブドアオート表明保証責任訴訟(*)-平成19年9月27日東京地裁判決(確定)-についても触れておきたいと思います。

ライブドアオートはライブドアとの間で、平成17年8月25日付けで「資本提携に関する基本合意書」、平成17年9月1日付けで「業務提携に関する基本合意」を締結し、その後、ライブドアがライブドアオートの過半数の株式を保有するに至りました。つまり、ライブドアがライブドアオートを子会社化したわけです。しかし、その後、ライブドアが指名しライブドアオートに派遣された取締役の一部が、ライブドア本体の粉飾決算等に係る証券取引法違反の疑いで逮捕され、ライブドア本体も東証への株式上場を廃止されました。このような事実関係の中で、自らも損害を被ったライブドアオートはライブドアに対して、「ライブドアは本件粉飾決算等を告知する義務があったのにこれを怠った」等と主張して約16億円の損害賠償請求を起こしました。

結論として、裁判所は、ライブドアオートからの請求を棄却しましたが、ここでのポイントは、本件各提携契約には「ライブドアの財務状況に関する表明保証条項」が存在しなかったということです。契約条項が存在しない場合、M&A契約の当事者は、それぞれいかなる範囲で自己の財務内容等を相手方に対して告知し、表明保証する責任を負うのでしょうか?

ライブドアオートは、「買収者が買収対象会社との間で資本・業務提携契約を締結した場合は、契約書上、条項として明示されていなくとも、信義則上、買収者は、買収対象会社に対し、企業の信用に深く関わる違法行為を行っていないことについて表明保証責任を負担する。」と主張しました。これに対して、ライブドア側は、「企業間の買収については、私的自治の原則が適用となり、同原則からは、買収に関する契約を締結するか否かを決断するために必要な情報は、契約の当事者各人が自己の責任において収集し、分析することが求められる。」と反論しました。

裁判所は、両者の上記主張を踏まえた上で、次のように結論付けました。
1. 企業間の買収については、私人間の取引であることから私的自治の原則が適用となり、同原則からは、買収に関する契約を締結するに当たっての情報収集や分析は、契約当事者の責任において各自が行うべきものである。そうだとすれば、情報収集や分析が不十分であったなどのために契約当事者の一方が不利益を被ったとしても、当該不利益は当該当事者が自ら負担するのが原則であると解するのが相当である。
2. したがって、企業買収において資本・業務提携契約が締結される場合、企業は相互に対等な当事者として契約を締結するのが通常であるから、上記の原則が適用され、特段の事情がない限り、上記の原則を修正して相手方当事者に情報提供義務や説明義務を負わせることはできないと解するのが相当である。
3. 本件各提携契約は、ライブドアオートからの申し出を端緒として、交渉の結果、ライブドアオートとライブドアとの間において締結されたものであること、ライブドアオート及びライブドアともに東証の上場会社であり、その交渉経緯に照らしても、両者間に構造的な情報格差があるとは認められない。そうだとすると、本件各提携契約は、ライブドアオートとライブドアとの間で、対等な当事者として締結されたものと解することができ、本件各提携契約を締結するに当たっての情報収集や分析は、原則として、ライブドアオートとライブドアのそれぞれの責任において行うべきものであったというべきである。


本件でライブドアが一切表明保証をしなかったわけではありません。
① 本件契約の締結及び履行につき、法令上及び社内規則上必要とされる一切の手続を履践していること、
② 本件契約の締結及び履行につき、規制当局の許認可等が要求されることはなく、適用される法令・規則、社内規則、第三者との契約に違反するものではないこと、
③ ライブドアオートの従業員の処遇については、少なくとも平成17年11月15日を目処に開催される臨時株主総会後1年間は、原則これを変更しないこと、
という3項目の表明保証条項が規定されていました。しかし、財務状況に関する表明保証はなかったのです。

ライブドアオートは、本件訴訟の段階になり、「会社が、企業買収により他社を子会社化する場合、当該子会社の信用は、親会社となる買収者の信用に極めて大きく左右される。」と主張しました。そのように考えていたのであれば、本件契約書には、ライブドア側の財務状況に関する表明保証条項が入るべきだったのでしょう。ただし、理論的にはそうなりますが、実務上は、特に今回のケースのような「買主側の表明保証条項」を広範囲に要求することは交渉上難しく(売買の対象となるのはあくまで「売主側の事業」であるため)、売主側の表明保証条項は何十項目にも及ぶのに、買主側の表明保証条項は数項目のみ、というケースは珍しくありません。

「契約条項が存在しない場合、M&A契約の当事者は、それぞれいかなる範囲で自己の財務内容等を相手方に対して告知し、表明保証する責任を負うのでしょうか?」という最初のクエスチョンに対する答えは、「当事者が対等の立場にあって構造的な情報格差もないケースでは、契約書に定めない限り、相手方に対して自己の財務内容等を告知し、表明保証する責任は負わない」ということになるかと思いますが、交渉のプロセスで注意を怠りがちな「買主側の表明保証」についてもしっかり考えなければならないことを再認識させられた判例でした。

(*) 判例タイムズNo.1255 (2008.2.1) 313頁

表明保証条項を巡る紛争(日本のケース)(その1)

まずは、既に2年前の判例で、判例評釈も複数書かれていますのでご存知の方も多いと思いますが、M&Aに関する表明保証条項の解釈が問題となったアルコ事件-平成18年1月17日東京地裁判決(控訴審で和解が成立)-を紹介します。

【事案&判決要旨】(*1)
消費者金融会社A(株式会社アルコ)の企業買収を目的とするAの全株式の譲渡契約において、その譲渡価格(約23億円)はAの簿価純資産額により算出されており、株式の売主であるYらは、買主であるX(シンキ株式会社)との間で「Aの財務諸表は完全かつ正確であり、一般に承認された会計原則に従って作成されたものであること」等を表明保証し、この表明保証事項に違反があった場合にはこれによりXが被った損害を補償することを合意した。しかし、実際には、Aは、元本弁済に充当すべきであった和解債権についての弁済金を利息に充当し、同額の元本についての貸倒引当金の計上をしていなかった(その結果、貸借対照表上、簿価純資産額が不当に水増し計上されていた)。裁判所は表明保証条項違反を認めた上で、Xの悪意・重過失も否定し、YらはXに対して、不当に資産計上された利息充当額、本件和解債権処理を修正するための費用、本件訴訟を追行するための会計事務所・弁護士費用相当額の損害(合計3億円)を賠償する義務があると判示した。

・・・というものなのですが、本件では、売主側は、「本件和解債権処理の事実は、Due Diligenceの過程で提示した」と主張し、買主側はこれを否定しました。このようなやり合いは実務ではさほど多くはありません。というのも、近年のDue Diligenceにおいては、このような事後の紛争を避けるために、対象会社に対する質問があればペーパーで質問しペーパーで回答をもらうのが通常だからです。しかし、M&AのDue Diligenceでは、通常、経営陣等に対するインタビューが設定され、これは口頭で行われます。また、M&Aのスケジュールは非常にタイトであることが多く、相手方との協議の場が立て続けに設定されることもあるため、後日「口頭で伝えた、伝えなかった」という言い争いが発生することもありうるでしょう。本件の裁判所は、「買主側が当該事実を知り得たとはいえない」と認定しましたが、弁護士・会計士は、Due Diligenceの過程で示された事実を見落とさないよう注意するのはもちろんのこと、Due Diligenceの過程そのものとそこでやり取りした情報をなるべく記録に残すことが大切だと感じます。

(*1) 金融商事判例1234号6頁、金融法務事情1770号99頁、「M&A判例の分析と展開」(経済法令研究会)196頁

表明保証条項を巡る紛争(アメリカのケース)

M&A契約には、通常、表明保証条項(*1)が入りますが、最近(2008年1月29日)、アメリカ連邦裁判所第8巡回控訴審は、Eckert v. Titan Tire Corp.事件(*2)において一つの判断を示しました。このケースでは、買主であるTitanが売主であるPirelliから従業員に対する退職金給付義務を承継したのですが、この退職金の計算に関してPirelliがTitanに提出したデータが間違っていたのです。本件の契約(資産譲渡契約でした)には、「PirelliはTitanに対して、承継した退職金給付義務を履行するに足りる資産を譲渡しなければならない」という義務が定められていたほか、「PirelliはTitanに退職金給付義務に関し正確な評価(correct actuarial valuations)を提供した」ことをPirelliが表明保証する条項が付けられていました。そして、本契約においては、この表明保証条項は1年で違反主張ができなくなるとされていましたが、前者の「PirelliはTitanに対して、退職金給付義務を履行するに足りる資産を譲渡しなければならない」という義務についてはこの期間制限は存在しませんでした。裁判で、Pirelliは1年の期間制限が過ぎていることを主張し、Titanは「Pirelliは承継した退職金給付義務を履行するに足りる資産を譲渡しなかった」と主張しましたが、裁判所は、「結局のところ、本件の計算間違いは表明保証条項違反である」として、Titanからの請求を棄却しました。

本件は事実認定に係る部分が大きく、先例としての重要性は高くないものと考えますが、実務家としては、(日本・海外に関係なく)「何が表明保証の枠の中に入ってくるか」「表明保証の枠の中に入るのと入らないのとで、どのような効果の違いが発生するか」という問題を常に意識しなければならないということを再認識させられるケースでした。日本の場合、表明保証条項に関する紛争が裁判にまで発展することは未だ多くはありませんが、いくつか出てきていますので、次回のコラムで紹介したいと思います。

(*1) M&A契約では、相手方の資産・負債・法的問題・会計的問題等について事前調査(Due Diligence)を行った上で、表明保証(Representations & Warranties)条項を設け、売主と買主が相互に相手方に対して事実を表示(Representation)し、かつ真実であることを表明者自身が保証(Warranty)することによって、その事実に違反した場合に相手方が被った損害を補償することが行われています。
(*2) Eckert v. Titan Tire Corp., 8th Cir., No. 07-1092

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